Sunday, October 11, 2009

Land of the High Flags

子供の学校が今日から三連休だとは知らなかった。アメリカ全体がそうなのだろうか。わが社ではそんな話は全然聞いていないが。
昼頃からからのろのろと立ち上がり、家族でセントラルパーク沿いにある自然歴史博物館に行くことにした。20年前に一度行ったことがある。もっと見たいという気分だけは覚えているが何を見たのやらさっぱり覚えてない。NYに引越して今回が二回目だが、全部満足するまで見尽くすにはあと何十回も通わないと無理だろう。

NYはタクシーが異様に安いのでタクシーばかり乗ってしまうが、こどもに贅沢は敵だということを率先して教えるために今回は地下鉄で行くことにした。しかし、東側のミッドタウンに住んでいるので、アッパーウェストに行くには地下鉄はあまり便利ではない。NYの地下鉄は南北移動には便利なのだが、東西移動の路線が充実してない。徒歩を含めて小一時間かかってしまった。バカバカしいので帰りはタクシーにした。千円ほどだった。

79丁目で降りて、そこから博物館まで歩いたのだが、途中で道端で本を売っているおばさんがいた。それも一種類の本だけ。タイトルを見ると、Land of the High Flags(副題はAfghanistan When the Going Was Goodだが、その時は見えていなかった)とあり、砂山と青い空の茫漠とした景色の写真が表紙になっている。ムムム。もしかして、と思って一冊手にとってみると、やはりアフガニスタンの話であった。もう最近は考えないことにしていたのだが、いったいどういう本なのか興味がわかないわけはない。著者名はRossane Klass。1950年代にアフガニスタンに住んでいたらしい。その頃の話が書いてあるとしたら、是非とも読みたい。9・11以後、アフガン本の大ラッシュが起こったが、身も蓋もなく行ってしまうと、読んだかいがあったと思えるのは、ほんの少ししかなかった。こういう現象はきっとあらゆる分野で発生するのだろう。あるトピックに火がつく→出版ラッシュが起きる→ほとんどクズ。まあ、他人ごとでもないわけですけど。

本を売っているの白髪の女性がきっとRossane Klassさんなのだろう。それくらいきいておきたいと思ったが、他のお客さんが長々と話をしていて、終わる気配がない。子供たちは早く博物館に行きたいだろうし、お金だけ払って立ち去るかと考えていたら、彼女から声をかけてきた。「本を買いたいの?」
「え?あぁ、そう?買いたい」といつも通りまぬけな対応。
「この辺に住んでるの?」
「え?あぁ、まあこの辺。というかあ、アフガニスタンに住んでいたことがあるので、どんな本かなと興味がわいて」
「あら、そう、いつ頃」
という具合に話が始まってしまったのだけど、これは絶対に長い話になる。それが嫌なわけではなくて、むしろいろいろ聞きたくてしょうがなかったのだけど、今は最高にタイミングが悪い。
泣く泣く、「今から子供を博物館に連れていかないといけないので。もっと話をしたいんだけど」というと、
「じゃあ、あなたの名前をここに書いて、本にサインをするから」と行ってサインをしてくれた。
いつか居場所を突き止めて話をしに行こうと決意を固めて、お礼を行って立ち去ろうとすると「インクがまだ乾いてないから気をつけてね」という。別れ際の挨拶言葉としては上等舶来部門に入るだろう。なんとなくアーウィン・ショーを思い出した。

サインをしてくれたページが向かいのページにくっつかないようにそこに指をはさんで、博物館に急いだ。

夜、おもむろにこの本を開いた。分離独立直後のカラチに船で到着する場面から始まっていた。その約40年後に僕は生まれて始めてカラチに船ではなく飛行機で到着するのだが、あまりにその情景や心理風景が似ていたので、最初の1ページから郷愁に包まれてしまった。

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