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『 カブール・ノート II 』
< hard revenge - no. zero >
●山本芳幸
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坂本龍一さま
「カブール・ノート」続きを書いていくつもりでしたが、今のところあんな長いのを書く気分じゃないので、もっと短くて速報みたいなのを出して行くことにしました。シリーズタイトルは、「hard revenge」(!)です。
26日早朝イスラマバードに着きました。
やっぱりきつかったです。
幸い息子はいろんな局面で素早く短い睡眠をとってくれたので最後まで元気でした。
僕はトランジットで走り回るはめになって全然眠れず、イスラマバード空港にはボロ布のような状態で着きました。
全行程リコンファームしていったのですが、そういうのがまったく無視されていて、次のフライトのチェックインをしようとするたびに、そんなのブッキングされてないよとあっさり言われる。当然、チェックイン・カウンターは完全にbattlefieldと化していました。
みんなが同じ状況で、みんなが頭に来ていて、みんなが焦っていた。怒号が渦巻く中で、ねちねちと理屈で迫る人や、ひたすら悲しそうな顔をして情緒に訴える人やいろんな戦略でみんな自分の席を確保しようとしていて、結構おもしろかった、と今なら言える。
だだっ広いドバイ空港の中を3時間半動き回っていろいろ考えましたよ。権威的に出る必要がある局面とか、下手に出る必要がある局面とか、フレンドリーに出る 必要がある局面とか、それを見誤ってミスマッチな態度を出してしまうと、絶対ダメだなと思っていろんな演技の使い分けをしていたのでかなり疲れてしまっ た。
もう戦闘放棄って感じでドバイ空港のDepartureの階はあっち こっちの床の上にゴロゴロしてる人がいっぱいいました(いつでもそんな人は何人かいますけど)。もっと若くて一人旅なら僕もこうしていたかもしれないと思 いましたが、今はこうなってはいけないと固く思いつめ、彼らを無機物のように無視している自分を今思い出せます。
ちょっ と違うかもしれないですけど、loserとwinnerという分け方がこういう時にぴったりきそうな気がした。loserになってるヒマがないって固く思 い詰めてる人がwinnerになるのかもしれないって。しかし、それでいったい何に負けて何に勝つんだと考えると、loserとwinnerの立場が逆に 見えたりもするんですが。
ともかく、僕は3つの席をもぎとって、ボロ切れに はなりましたが予定通りイスラマバードに到着しました。こっちへ来て分かったのですが、今パキスタンへ入る便はコンファームもフライト・スケジュールも へったくれもないそうです。しょうがないですね。PIA(パキスタン国際航空)以外はほとんど運休ですから。
最近飛行機に乗った人はもう知っているのでしょうが、機内食のナイフが、ナイフだけがプラスチックに変わっていて、かなりこれは変なかんじでした。フォークとスプーンは金属でナイフだけが白いプラスチックになると味まで分からなくなる。
僕は間抜けなことにあれっ間違えたのかななんて思ったのですが、その瞬間、妻がテロ対策だと言ったので、おっそんなこと考えているのか、すごい!と思った。そういうことを云うと怒るから何も云わなかったけど。
> 今回のことで、島は危険だと分かりました。
> アクセスを全部閉じられたら、どこにも逃げられません。
> 今後、自分が地球のどこに住んだらいいのか、そればかり
> 考えてます。
タイは仏教国だし、食べ物もおいしいし、足つぼマッサージもうまいし、
いいなと思っていたんですけど、3万人のムスリムが反米デモをしていました。
逃げ場のない戦争、これが第三次世界大戦だったのかもしれません。
ところで、僕はビザが取れしだいタジキスタンのドシャンベに行く予定です。そこから、タジキスタンベースの国連、NGOのキャパシティを調べ、アフガニスタンへの救援物資の突破口がないか探るのが仕事です。
まず、2、3週間ほど滞在してまたイスラマバードに戻ってきますが、またタジキスタンに行きます。アフガニスタン北東のファイザバードにベースを作って点を 線につないでいきます。同時にカブールを含む中央地域への援助供給の道をイスラマバードから開く仕事も続けます。かなり人手不足です。
今日の朝、カブールから電話がかかってきたのですが、タリバンのMinistry of Communicationからでした。カブール事務所のスタッフがそこで衛星電話を借りてかけてきました。
ところが、そういう面倒ももうすぐなくなりそうです。タリバンの大親分のオマールは国連から接収した通信機器や車を返せというお触れを出して、今それが戻ってきています。援助業務に協力しろっていうお触れです。
まだカブールに住んでいる人たちに電話で聞いたのですが、アメリカの飛行機はすごい高いところを飛んでいて黒い点としか見えない、だから、変なところにあちこち爆弾落すのだと言ってました。目視に頼るわけじゃないでしょうが、やはりそういうのも関係あるんでしょうかね。
国連やNGOの倉庫をタリバンのコンボイだと思って爆弾落すとか、屋根に大きく赤十字が書いてある国際赤十字委員会の施設が3回も爆弾落されるとか、地雷除 去に使う犬の小屋が洞窟のように丘の側面に並んでいるのですが、そこもたぶんテロリストの洞窟だと思われたのでしょう、爆破されて犬が吹っ飛ばされてし まったり、バカバカしいいことが毎日起こりつづけている、と彼らは憤っています。
タリバン系ラジオ局といわれているRadio Shariatのステーションを爆破したって、だいぶ前に新聞には出ていたけど、彼らはとっくにモバイル化していて、通信機器一式をトラックに積んであちこち移動しながらまだ放送は続いていました。
対空砲なんかもみんなモバイルになっていて、トラックに載せて街の中の木陰とかに止めてるそうです。戦車もあっちこっちに分散して住宅地の木陰にあったりす るそうです。これでは空から何やっても無駄なんじゃないだろうか。アフガニスタン全土を焼き尽くしでもしないかぎり。しかし、それは人類史上最大の虐殺に なるでしょう。
アメリカはいったい何を戦っているのでしょうか。訳の分からない攻撃の合間に全然なんにも関係ない人が死につづけているってのは、どう考えても正当化できない。
「ひどい仕打ち」だと思います。
というわけで、こんな話の羅列みたいなのを速報形式でだそうと思ったのですが、このシリーズタイトルを「hard revenge」にしたいと思ってます。まさにhard revengeだから。坂本さんに一言お断りをしなくてはいけないと思い、長いメールになってしまった。
だいたい言い訳って長くなるんですよね。
山本芳幸
(2001年10月30日 イスラマバードにて)
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ryuichi sakamoto "hard revenge", FLCG-3006 made in Japan '94.12.16
ryuichi sakamoto
http://www.sitesakamoto.com/
debris of prayer
http://www.sitesakamoto.com/WTC911/debrisofprayer/
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本文で表明されている見解はすべて筆者個人のものであり、筆者の所属する組織の見解とは一切関係ありません。
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