Sunday, October 11, 2009

Land of the High Flags

子供の学校が今日から三連休だとは知らなかった。アメリカ全体がそうなのだろうか。わが社ではそんな話は全然聞いていないが。
昼頃からからのろのろと立ち上がり、家族でセントラルパーク沿いにある自然歴史博物館に行くことにした。20年前に一度行ったことがある。もっと見たいという気分だけは覚えているが何を見たのやらさっぱり覚えてない。NYに引越して今回が二回目だが、全部満足するまで見尽くすにはあと何十回も通わないと無理だろう。

NYはタクシーが異様に安いのでタクシーばかり乗ってしまうが、こどもに贅沢は敵だということを率先して教えるために今回は地下鉄で行くことにした。しかし、東側のミッドタウンに住んでいるので、アッパーウェストに行くには地下鉄はあまり便利ではない。NYの地下鉄は南北移動には便利なのだが、東西移動の路線が充実してない。徒歩を含めて小一時間かかってしまった。バカバカしいので帰りはタクシーにした。千円ほどだった。

79丁目で降りて、そこから博物館まで歩いたのだが、途中で道端で本を売っているおばさんがいた。それも一種類の本だけ。タイトルを見ると、Land of the High Flags(副題はAfghanistan When the Going Was Goodだが、その時は見えていなかった)とあり、砂山と青い空の茫漠とした景色の写真が表紙になっている。ムムム。もしかして、と思って一冊手にとってみると、やはりアフガニスタンの話であった。もう最近は考えないことにしていたのだが、いったいどういう本なのか興味がわかないわけはない。著者名はRossane Klass。1950年代にアフガニスタンに住んでいたらしい。その頃の話が書いてあるとしたら、是非とも読みたい。9・11以後、アフガン本の大ラッシュが起こったが、身も蓋もなく行ってしまうと、読んだかいがあったと思えるのは、ほんの少ししかなかった。こういう現象はきっとあらゆる分野で発生するのだろう。あるトピックに火がつく→出版ラッシュが起きる→ほとんどクズ。まあ、他人ごとでもないわけですけど。

本を売っているの白髪の女性がきっとRossane Klassさんなのだろう。それくらいきいておきたいと思ったが、他のお客さんが長々と話をしていて、終わる気配がない。子供たちは早く博物館に行きたいだろうし、お金だけ払って立ち去るかと考えていたら、彼女から声をかけてきた。「本を買いたいの?」
「え?あぁ、そう?買いたい」といつも通りまぬけな対応。
「この辺に住んでるの?」
「え?あぁ、まあこの辺。というかあ、アフガニスタンに住んでいたことがあるので、どんな本かなと興味がわいて」
「あら、そう、いつ頃」
という具合に話が始まってしまったのだけど、これは絶対に長い話になる。それが嫌なわけではなくて、むしろいろいろ聞きたくてしょうがなかったのだけど、今は最高にタイミングが悪い。
泣く泣く、「今から子供を博物館に連れていかないといけないので。もっと話をしたいんだけど」というと、
「じゃあ、あなたの名前をここに書いて、本にサインをするから」と行ってサインをしてくれた。
いつか居場所を突き止めて話をしに行こうと決意を固めて、お礼を行って立ち去ろうとすると「インクがまだ乾いてないから気をつけてね」という。別れ際の挨拶言葉としては上等舶来部門に入るだろう。なんとなくアーウィン・ショーを思い出した。

サインをしてくれたページが向かいのページにくっつかないようにそこに指をはさんで、博物館に急いだ。

夜、おもむろにこの本を開いた。分離独立直後のカラチに船で到着する場面から始まっていた。その約40年後に僕は生まれて始めてカラチに船ではなく飛行機で到着するのだが、あまりにその情景や心理風景が似ていたので、最初の1ページから郷愁に包まれてしまった。

Tuesday, September 15, 2009

初めてのスクールバス

  

Hymns About Her (advance) by Steven Dunston
今年の5月に6歳になった次男は9月からニューヨークで小学一年生になった。
日本では小学校入学というと、ちょっとしたイベントだったが、ここでは特に入学式のようなものもなく、何気なく始まった。ランドセルを買ったり、文房具を買いそろえたりという家族内行事もない。

それでも、これまではと少し違うという感覚を次男は持っているようだ。初めての机を買ったのだが、数少ない自分の本をちゃんと机に作り付けの本棚に入れて一人で厳かに体裁を整えている。
初日だけ母親が学校までついていったが、二日目からは黄色いスクールバスに10歳のお兄ちゃんと二人で乗って学校に行き始めた。

「初めてのスクールバス」というのは、職場でも話のネタになっている。それぞれの子供たちの「初めてのスクールバス」体験談を親たちは語って止まない。親にしがみついて離れようとせず、スクールバスに乗れない子、泣き叫ぶ子、滝つぼにとびこむような人相でバスに乗り込む子。よく考えてみれば、ほとんどの子供にとって「初めてのスクールバス」は親からはなれてどこかへ一人で行くという人生最初の体験となるのではないだろうか。

同僚のRは自分の子供が初めてスクールバスに乗って学校に向かう日、自分が泣いてしまったと言っていた。それもよく分かる。

初めてのスクールバスを体験して帰って来た日、次男は母親にスクールバスは嫌いだ、もう乗りたくないと伝えたそうだ。しかし、二回目のスクールバスの後はもう知り合いもでき安心してバスに乗るようになっていた。

しかし、三回目のスクールバスで登校した日、学校に到着してそれほど間もない頃に学校の看護婦さんから僕の携帯に電話がかかってきた。おなかが痛いといって泣いているので迎えにこれないかという。すぐに母親に学校に行ってもらった。

後で事情をきくとおなかは問題なかったようだ。担任の先生によると、教室ですわっている時、突然次男の目から涙が溢れ出て来たらしい。そして、あわてた先生は次男を保健室に連れて行く。そのどこかの時点で次男は長男と遭遇し、長男は次男をなぐさめようとしたらしい。長男によると、次男はその時、I feel lonely.と言っていたそうだ。

初めての国、初めての学校、初めてのスクールバス、そして誰も友達がいない、という状況はかなり重いだろうと思う。三分の二くらいは幼稚園部から進級してきているので、友達のいる子は多い。三分の一くらいが小学校から入って来ているのでうちの次男と同じ状況だが、その半分以上はすでにニューヨークに住んでいた子供たちなので、初めて尽くしというわけでもない。

あとになって知ったのだが、次男はスクールバスで初めて登校した日に、気の合う友達ができてとても喜んでいた。そして三回目のスクールバスにのって学校に行った日、その初めての友達は学校を休んでいた。また、次男は一人ぼっちになったと感じたのだろう。一人で教室にすわり、限界までこらえていたのだろう。そして、とうとう涙があふれてきたというわけだ。

家に戻って来て、思いっきり寝たそうだ。大人でも経験するが、初めてのことというのは何をしてもとても疲れる。忙しくいらいらする親の見えないところで、子供たちも疲れている。子供たちも結局すべてを乗り越えてタフに育っていくしかないのだろう。

四回目のスクールバス、次男はまた機嫌良く出かけて行った。

Tuesday, September 08, 2009

NYに引っ越し

(窓から見える夜景がきれいなのでiPhoneで撮ってみたがやはりいまいち)

引っ越しは実に面倒くさい作業だ。何回やっても面倒くさい。
7月25日に家族そろってコペンハーゲンからアイスランド経由でニューヨークにやってきた。
デンマークのResidence Permitをキャンセルして、アメリカのG4 Visaを取得して、最悪のタイミングで失効したパスポートを延長して、やっとパスポートを取り戻したのは出発前日の午後5時だった。
そして、買ったばかりの新車を売却したのは出発当日の午前9時、と実にジタバタしたもんだ。

出発の前日二日間は運送屋が家にやってきてパッキングをやる中でなんやからかんやらの手続きに走り回ってよれよれになったが、イラク人のモハメッドが実によく働いてくれた。こういう時は想定外の雑用が次から次に発生するものだが、そんな時になんでもやってくれる助っ人がいると実に助かる。モハメッドのいとこもやってきて、車の掃除から、パッキング後の部屋の後片付けやら、冷蔵庫の掃除、銀行へ行ってチェックの換金まで何から何まで実によくやってくれた。アルバイトのつもりで来てもらったのだが、頑なにお金は受け取らなかった。イラク人やアフガン人はそういうものなのだ。こっちがお金を払おうとすることにむしろ彼らは傷つく。しかし、彼らは同時にお金をむしりとる天性の技術も持っている。いつ彼らがその技術を行使し、いつしないかは、たぶん日本人ならつきあっているうちに分かってくる可能性が高いが、分からない人もいるかもしれない。西洋人はどうも日本人よりも、そういうことを理解するのが下手なように見える。

モハメッドと知り合ったのは、2003年の5月バグダッドで仕事をしていた時だ。ドライバーとして雇ったのだが、どういう経緯で雇ったのか全然覚えてない。スタッフの誰かが連れて来たのかもしれない。アンマンから陸路でバグダッドへ向かっていたスタッフの車が魔のスンニー三角地帯でパンクして、パニックコールを送って来た時に立ち上がったのがモハメッドだった。パンクした車に乗っていたスタッフは近辺の米軍に助けを求めたが、相手にしてもらえなかったようだ。軍はお巡りさんじゃないのだから仕方がない。上の上の方からの指令がないかぎり、勝手に動くわけがない。

その頃は戦争終結宣言の直後でまだ国連のほとんど存在しないし、NGOもまだパラパラと入って来ているだけで、活動している外国勢と言えば圧倒的に米軍であった。アンマンの米大使館で人道援助の調整をする部門が置かれていて、イラクに入る時は必ずそこに連絡していって欲しいとアメリカは念を押していたが、そんなことを知らない人もいたし、嫌米が最高に盛り上がっていた当時ではあえてそんなことをしない人たちも多かった。アンマンの米大使館でイラクへ入る人の情報を入手できれば、それをバグダッドの米軍へ送って間違って攻撃してしまう可能性を減らすという、それだけのことだったと思うが、いろいろ勘ぐる人はいるものだ。

バグダッドでは米軍が人道援助機関の合同会議を毎週開いて、いろいろな情報を提供して、なんとか人道援助が始まるようにしようとしていたが、そういう会議もやがて、米軍とは距離を置きたいという組織が離れていき、分裂状態が発生していった。原則の問題だという主張に文句を言ってもしょうがないが、当時情報源は米軍しかないというのが現実だった。その後様々な人道援助機関も自前の情報を蓄積していったと思うが、その圧倒的な差は今も埋まったとは思えない。

話がずれたが、パニックコールがやってきた後、僕はアンマンの米大使館に電話して事情を話して救援に行けないかきいてみた。直ぐにバグダッドの軍に連絡するからGPSで位置を確認して送ってくれということだった。それから、のろのろと徐行しながらバグダッドに向かうスタッフからGPSの位置情報を受け取っては、それを僕がアンマンの米大使館に送るという作業を続けていた。しかし、いったいいつになったら米軍の救援はやってくるのか、だんだんパンクした車に乗っているスタッフのパニック度が高まってくる。その時、その頃まだほとんど英語の話せなかったモハメッドが自分が助けに行くと買って出たのだった。

一人で行かせるわけにも行かないので、助手席に乗って出かけたが、モハメッドは猛烈なスピードで走り始めた。自分はバグダッドの道をすべて知っていると言って、ものすごいカーブの切り方をする。僕はあっという間に吐き気がしてきた。

それがモハメッドだった。その5年後、ひょっこりと僕はモハメッドとコペンハーゲンで出会うことになった。彼は難民認定の申請中であった。バグダッドで人道援助機関で働いていたことを弁護士に説明して欲しいというのでもちろんした。まだ彼の難民認定はまだ審査中だ。

Wednesday, July 01, 2009

MacBook Pro

先週末まで2週間、NYに出張していたのだが、NYに着いた翌日からEeePC S101が起動しなくなってしまった。正確にはそこに入っていたWindows XPが起動しなくなった。仮想メモリが足りないというメッセージがしばらく出ていたのでセーフモードで起動して仮想メモリを増加してみたが、普通に起動しようとするとやはりダメだった。しょうがないので、ITの部署の人に見てもらったが、どうにもこうにもならない。潰れたらしい。いつまでも動かないWindows XPに費やしてる時間はないので、SDカードにインストールしていたUbuntu 9.04 Notebook Remixで起動してみると、あっさりと動いた。素晴らしい!

しかし、本体が屍と化したコンピュータをSDカードに入ったシステムで動かしているというのも妙なもんだ。いずれ時間があったら、本体を徹底的にチェックするか、完全に諦めてEeePCのSSDからWindowsを削除してUbuntuを入れてしまおうとも思ったが、その前にちゃんと動くコンピュータが欲しくてたまらなくなってきた。SDカード脆弱説があるので、いつこれも終わってしまうかわからないではないかという正当化も一応ないことはない。

ちょうど同僚のカレンもコンピュータを買う必要があるというので、週末に五番街のBest Buyにコンピュータを見に行った.....
が、どうもパッとしない。ヨドバシカメラならあれもこれも欲しくなるのだが、ここにはどうも物欲をそそるものが見当たらない。カレンも同じ意見なので、五番街でももっとセントラルパークよりにあるMac Shopに行ってみることにした。

おーっという人だかり。パッとし過ぎなくらいパッとしてる。一気に物欲の権化と化す。もう当然Macを買うしかないという状況になったが、どれを買うべきか、しばし悩む。MacBook Airが軽くて一番かっこいいのだが、どうせ買うなら現時点で最高の力量をもっているのにしたい、と欲望はとどまるところを知らない。カレンも同じ意見で結局、まったく同じコンピュータを買った。

買ったのは、MacBook Pro 13 inch のメモリ4GBヴァージョンで、1499ドルだった。
[仕様]
MAC OS X Version 10.5.7
Processor 2.53 GHz Intel Core 2 Duo
Memory 4GB 1067 MHz DDR
250 GB 5400-rpm hard drive
NVIDIA GeForce 9400M graphic processor
13.3 inch backlit glossy widescreen display
Multi-Touch trackpad

それとあまり乗り気はしないが仕事で使うために、Microsoft Office 2008 for Mac Home and Student Edition を二人とも買った(134.95ドル)。それとFileMaker を僕は買うつもりだったのだが、FileMakerの子供のようなBento 2というソフトをカレンが見つけてきて、内容を見ると単純なデータベースを作るだけならこれでも十分そうだったので、結局これも二人とも買った(49.95ドル)。しめて、1810ドル。

その後カレンは別の買い物に向かっていったが、僕はすぐにホテルに戻って箱を開けて使い始めた。
すごい、素晴らしい、あまりのきびきびした動きにしばし感動する。最後に使っていたMacは、Powerbook 5300というやつだった。


[Powebook 5300の仕様]
Introduced: August 25, 1995
Discontinued: August 3, 1996
Price: 2300 - 6800 USD
CPU: PowerPC 603e, 100 - 117 MHz
RAM: 8 MiB, expandable to 64 MiB, 70 ns unique DRAM card
OS: System 7.5.2


なかなか評判の悪い機種だったが、一番のネックは互換性だった。職場でWindows、家でMacという生活はソフトにほとんど互換性のない状況では悩ましいものだった。それにしても、メモリのサイズが10年ちょっとで500倍になったわけだ。すごい進化だ。



使い始めてまだ2週間も経たないが、今までで間違いなく最高のコンピュータだと思う。ちょっとした動作の仕方にUbuntuというか、Linuxに似ているなあと思うところがあるのがおもしろい。

Thursday, June 04, 2009

キャンディ

こどもの英語がもろネイティブでだんだん分からなくなってくる。
多言語環境で育つと耳がとてもよくなるのだろうと思う。単一言語環境で育った僕には区別のつかない音がこども達にははっきりと聞き分けられるようだ。まず聞き分けられないと発音のしようもないから、土着日本人の僕にはLとRの発音を仕分けるなんてことは顔面神経痛になる勢いでも無理だ。

長男がデンマーク語の分厚い本を持ち歩いてるから、読めるのかときいたら、読んでいるという。当たり前か。ここで漬物石の代わりに使おうと思っているなんて回答は望んでも出てこない。

長男のデンマーク語はどんなものなのか聞いてみようと思って、ちょっと読んでみ、と言って適当に本を開いて指差すと、なんとまったく分からない発音で読み始めた。まるでデンマーク語だ。どうやってそんな音を出すのか想像できないが、僕が中学生の頃に、学校で教えられたような舌を上の歯茎の裏側につけてとか、下唇を噛み切ってとか、そんな習い方をしたわけではないのは想像に難くない。今から思うと、あの英語発音の教え方はホントにアホではないかと思う。

デンマーク語は発音がヨーロッパで一番難しい言語だとどこかのサイトで読んだことがあるが、ほんとに把握不能な音がいっぱいあり、さらに奇妙に音が上がったり下がったりして、この言語の発音は中国語と同じくらい難しいんではないかと思う。

夕方、空手クラブに行ってる長男を迎えに母親が家を出て行って、次男と二人きりになったら、ソファに寝そべってテレビを見ていた次男は何やら英語で長い話を始めた。なんかこうやって一つのかたまりになった話をするのは何事かと思って聞き直すと、僕が理解しなかったのを見て取って、何度かフレーズを変えて説明し始めた。

要約すると、他の子供の誕生日会に行くとその子のパパとママが、little people(と次男はこどもたちのことを呼ぶ)がキャンディとかロリーポップの包み紙をむくのに困ってたら助けてあげる、だから、明日の自分の誕生日会兼お別れ会で、困ってる子がいたらパパもキャンディとかロリーポップの包み紙をむいたりするのを手伝わないといけない・・・。

なるほど。最初はまったくコンテキストが読めず、いきなり何を言うのかと思ったが、どうやらこれは真剣なお願いごとだったのだ。神妙に聞いて諾と返事をした。自分の親が他の子供の親と同じようにしてくれるか心配でたまらなかったのかもしれない。母親のいないすきにささっと言うというその心にもまた何か深い意味がありそうだが、分からない。6歳の頭の中で何が考えられているのか、大人には決して想像できないと思う。実に興味深い。

明日は仕事は早引きしてキャンディとロリーポップの包み紙をむきに行く。



この汚い(としか大人には見えないが)ぬいぐるみの犬が、次男のクラスの大人気ものなのだ。ペドロという名前で、普段は教室に住んでいるのだが、持ち回りで子供たちが家に連れてかえって世話をする。ちゃんと寝かせてあげて、翌朝は遅刻しないように連れてきてくださいという先生の手紙といっしょに子供たちはペドロを家に連れて帰ってくるのだ。見ていると、自分が世話しないといけないものという存在が現れることによって、責任を感じているのが分かるから、おもしろい。ペドロは自分用の旅行カバンももっており、それもいっしょに持ってかえって、子供はペドロの服を着せ替えないといけない。こんな経験から責任感とか達成感とかやがて責任から解放感とか、いろんな感情の種類を味わうことができるのだろう。実におもしろい。うまくできたメソッドだと思う。

Saturday, May 30, 2009

結局どのブラウザが一番良いのか、

一応質問に答えるべく考えてみたけど、よう分かりません。

どういう用途に使うか、どういうOS環境か、使うコンピュータは一つに決まってるのか複数なのか、自分のコンピュータなのか不特定多数の人が使うコンピュータなのか、等などいろんな条件の組み合わせで何がよいのか悩ましくなってくる。

ちょっとだけ条件をしぼって、かつ僕の個人的な要望を満たせるように考えると、

1. Windows だけ使う場合:
第一位:Lunascape(当確)
第二位:Chrome
第三位:Firefox組(Flock/Wyzo/Firefox/Seamonky/Sunbird)のどれか。一つを選ぶとすると、Flockになる。

Lunascapeを見つけるまでは、職場ではIE+Chrome、家ではIE+Chrome+Firefoxという組み合わせでしのいでいた。ChromeかFirefoxのどちらか一つだけでほとんど問題ないと思うけれど、どうしても解決できない問題が一つあった。それはデンマークの或る銀行のインターネットバンキングがIEしか受け付けないということでした。アメリカと日本にある銀行のインターネットバンキングはどのブラウザでも大丈夫なのに、このデンマークの銀行のサイトはにっちもさっちもいかない。日常のすべての銀行業務をインターネットバンキングで行うというのが前提になっているような国なのに、IE限定というのは実にアホげている。あまりに頭にきて夜中にこの銀行に電話してIT担当者と協議に及んだことがあるが、どうやらこの銀行のインターネット
バンキングのセキュリティが、小さなソフトをこちら側に送りこんで、それをこっちのブラウザに植え付けるというシステムになっているらしく、それでその小さなセキュリティソフトがIEにしか対応していないということらしい。
というわけで、IEを使っているといっても、ほぼ空っぽでこの銀行のサイトだけがブックマークしてあり、ホームページに指定していた。このサイト一つのためだけにIEは存在していたのでした。

で、三種類のエンジンが使えるLunascape導入後、デフォルト・エンジンはGeckoにしたのだけど、その後に、おそるおそるTridentに変えて、このデンマークの銀行のサイトに行ってみた。なんとちゃんとインターネットバンキングが使える!これは便利です。もう一つのブラウザですべての用を足すことができる。サイトごとにエンジンを指定しておくと、勝手に切り替えてくれるという便利な機能もある。そして、何よりすべての動きがとてもきびきびして速い。すべてのコンピュータでWindowsしか使わないのなら、Lunascapeの圧勝。

哀しいのは、LunascapeがWindowsにしか対応していないということ。なんとかしてほしいものだ。

2. Mac OSXだけ使う場合:
第一位:Safari(当確)
Caminoを使ったことがないので比較できないけど、Safariがあまりによくできているので、他を探す必要が見つからない。

3. Linuxだけ使う場合:
第一位:?
ソフトの倉庫みたいなところをのぞいてみると、Linux用にはテキストベースのブラウザというのがたくさんある。LinuxでもFirefoxに人気があるようだけど、きっと他にも鋭いものがあるのだろう。いくつか試したけど、みんな共通して速かった。Chromium, Epiphany, 風博士、Midori, arora, Konqueror, Opera, Firefoxの七つの中では、aroraに最近肩入れしている。それにしても、Chromumがまだstableでないのと、Lunascapeがないのが痛い。

4. WindowsとMac OSXを使う場合:
第一位:Safari(当確)
SafariはWindowsでも実に快調。

5. WindowsとLinuxを使う場合:
第一位:Opera(暫定政権)

このケースではほとんどの場合、Firefox(もしくはその仲間、Flock, Wyzo, Seamonky, Sunbirdなど)だと思うが、僕は何十個もAdd-onsを使わないので、あまりFirefoxの恩恵を感じない。Operaのシンクロ機能はメモまでシンクロしてくれるのでとても重宝している。いろんな機能がintegrateされてデザインがシンプルなのが気に入っている。

6. Mac OSXとLinuxを使う場合:
第一位:Opera(強いて選ぶなら)
ブラウザの統一となると、Operaか、Firefox組のどれかという選択肢にMacユーザーは苦々しい思いをするような気がする。その二つなら僕ならOperaを選ぶ。結局一つに絞らず、MacではSafariとLinuxではFirefox、というような使い方になるのだろうな。

5. WindowsとMac OSXとLinuxを使う場合:
第一位:Opera(暫定政権)

今気になっているのは再びArora。まだLinuxでしか試していないので、よく分からないが、Aroraのサイトにはこんなことが書いてある。
Arora is a simple cross platform web browser... It has a small code base and loads of fun to hack on. Benjamin Meyer originally created as a demo for Qt to help test the QtWebKit component and find API issues and bugs before the release. An very old version can still be found in Qt's source code in the demo/browser directory. Arora works on Linux, OS X, Windows, FreeBSD, and embedded Linux using Qt Embedded and anywhere Qt does...

AroraがSafariのベースだったのだろうか。そしてChromiumプロジェクトとの関係やいかに?これは期待してしまう。

Sunday, May 24, 2009

Wyzoというブラウザ


Firefox(とFlock)にさんざんお仕置きを加えて少しは身軽になったような気がするが、FirefoxもFlockも、Lunascape や、Chrome や、Safariや、Operaに比べるとやはり重くるしい。なんてことを思いながら、ウェブをうろうろしていたら、Wyzo というブラウザに遭遇した。中身はFlockと同じでFirefoxなのだが、ちょろちょろと手が加えてあるらしい。FlockはSocial Web Browserと自称していたが、WyzoはThe Media Browser という売り込みだ。

ダウンロードが10倍速いとか、BitTorrent内蔵とか(Linuxのdistroなら普通にソフトが入ってくるが、Windowsでは面倒くさいらしい)、いろいろ特色を打ち出そうとしているが、その一つにCoolirisアドオンがデフォルトってのもある。Firefoxで大人気のアドオンを予め入っているってことだが、その他にもFirefoxユーザの研究をしてえーとこ取りをしたような気配があるので(Flockもまさにそうですが)、Firefoxファンには便利なブラウザ候補になりそう。

まだLinux版は開発中ということなので、とりあえずWindows上にダウンロードしてみた。Firefox/Flockと同じチューニングをして少し使ってみるつもりだが、Lunascape 5 を打ち負かす勢いがあるかどうか・・・。

Coolirisってこんなやつ(↓)。

Sunday, May 17, 2009

Flock よりも LUNASCAPE

ほんの少し前にFlcokで大騒ぎしたところで、なんなんですが、LUNASCAPEというブラウザーを何気に試してみて、あっさり転向しました。これはいいものができたものだ。

1.あのChrome よりも速い。
2.Firefox/Fock 及びInternet Explorer のプラグインが使えるらしい。
3.Operaのような使い勝手がよくカッコいいデザイン。

まさに各ブラウザーのエートコ取りをしたようなブラウザーだなと思ったら、ほんとにエートコ取りをしているのだ。なんと、これはTriple Engine Browser なのだそうだ。ブラウザーというソフトは、ネットを通してはるかかなたからやってきたコードを画面に表示する、レンダリングという行為を律儀に延々とやっているわけですが、このレンダリング係をエンジンと呼ぶと、エンジンには何種類かあって、それによってブラウザーのスピードというのは変わってくる。

そんなちょっとした違いにぐちゃぐちゃ文句をつけて競争をするのはおかしいという意見もあるのだけど、このちょっとした違いは実はとても大きな違いだという意見もあってウェブ上では議論されているけど、これに関してはとりあえず、ここで僕は後者に一票を投じておく。

下のグラフはベンチマークテストの一つだけど、LUNASCAPEは三種類のエンジンでテストされている。実際使ってみたが、クリック一つでエンジンが切り替わる。しかも便利なのは自分が見るウェブサイトごとに違うエンジンを指定しておくと勝手にエンジンを変えて見せてくれる。これはIEでないとうまく表示できないサイトとか、Firefoxでないとどもいかんみたいなサイトを見る必要がある場合は非常に便利だと思う。ちなみに、
もしくはのエンジンはGecko、のエンジンはTrident、そしてのエンジンはWebKitだそうだ。

このグラフを見ると、IEのまったり感がよく出ている。しかし、はいったいどうしたのだ。世界一速いと自称しているので一度テストしてみようと思っていたが、ベッタですか。

EeePCを使う時は、画面が小さいので、とくに縦が短いのでツールバーやらなんやらいっぱいあると、ますます不利な環境になってくる。そういう人にはこのLUNASCAPEは結構便利な機能がついている。数々のツールバーやらなんやらが消えてディスプレイ全体が使える。マウスオーバーで簡単に元に戻すことができる。何を言っているのか分からなくなってきたので、下に写真を貼って以下省略。


今のところLUNASCAPEはWindowsにしか対応していない。Windowsユーザーには朗報ですねえ。16GBしかないSSDを使った、僕の小さく非力なEeePCのWindowsXP上には、IE, Firefox, Flock, Chrome, Safariと5つのブラウザーがひしめき、その裏面にさらに小さな8GBのSDHCにLinuxを入れ、Firefox, Flock, Epiphany, 風博士, Chromium の5つのブラウザーがわーわー言っている。こんな小さなPCに計10個もブラウザーを入れるはめになったのは、どれもこれも気に入らないところが出てくるからなのだが、とりあえずWindowsにはLUNASCAPEで落ち着けそうな気がする。

早くLinux版も出して欲しいが、その前にWindowsの世界で覇権を確立してほしいものだ。これはかなり有望だと思う。日本製だというのは驚いた。ここは一つ世界に果敢に打って出てほしい。というか、こういういいものは沈没してほしくないなあ。Windowsユーザーの皆さん、これ試してみましょう!

Wednesday, May 13, 2009

Lisa DeBenedicts

三夜連続音楽編になってしまいましたが、Lisa DeBenedictis についてこんな記事が http://download.magnatune.com/artists/debenedictis に載っていた。実にいい感じの音と歌ですね。


Lisa DeBenedictis began piano lessons at an early age and flirted with the idea of being a concert pianist. After years of practice and study, she decided she would rather learn guitar and play in a rock band.

She dropped out of music school, taught herself guitar and formed her first band in 1999, a rock duo called "Ring of Nine" which mainly played Concrete Blonde covers in New England coffee joints. Since 2001, she has also been one half of the California Avant Rock duo "DirtyDirtyRockStar." In addition to writing songs, Lisa composes instrumental music for film.

Lisa's solo music is fresh, original, and gorgeous. Her songs have an ethereal quality that will take you to another world.

A "one-woman operation," Lisa plays a variety of instruments including piano, guitar, keyboard, violin, oboe, and mandolin. She is the sole writer, performer, and producer of all her music.

With smart lyrics and fresh, interesting arrangements, she has earned comparisons to artists such as Tori Amos, Sarah McLachlan, Annie Lennox, and Aimee Mann.



Tigers by Lisa DeBenedictis

Tuesday, May 12, 2009

今日はSUN PALACE

今日はSUN PALACEをダウンロードした。


素敵な歌声です。NYのEast Villageを拠点にしているとか。NYに行ったら生で見てみたいものだ。公園とかでやってないかな。

Monday, May 11, 2009

Blind Divine をダウンロードした


最近、なぜCDを買わないのだと妻に訊問されたことがある。「そ、それはぁ、CD屋さんに行くよりぃ、ダウンロードした方が簡単だしぃ、安いしぃ・・・」、このへんでとんでもない間違いをしてしまったことに気がついたがもう遅い。気がつくのはいつも遅い。一秒遅い。妻はコンピュータが嫌いなのだ。コンピュータが嫌いというより、人がコンピュータに人生を乗っ取られるのを嫌悪しているのだ。そんなことはない、なんて言い始めても形勢は圧倒的に不利だ。コンピュータに向かっている時間を考えてみよう。かつてのそんな時間はすべてコンピュータのない時間だったのだ。確実に事実として人間はコンピュータに人生を削られていると言ってもよいかもしれない。しかし、今から何か打つ手があるだろうか。

LinuxのOSをインストールすると音楽や映像関係のソフトがごっそり付いてくる。もちろんみんな無料だし、XBMC や Boxee のようになんか勝手に先の方を走っているような次世代 Music Center のようなものもあるが、僕の非力なコンピュータでは、こういうのはあまり具合がよくないので、もっとこじんまりとしたのを使っている。いろいろ変えてみたが、今はRhythmbox 0.12.0つうのを使う。

こういうソフトにはたいてい last.fm, Jamendo, Magnatune なんかの音楽配信サービスがついている。なんにも払わなくてもどんどん音楽が流れてくるので楽なもんだ。別に買ってみようなんてことは考えたことなかった。

しかし、今日、今まで触っていなかった Magnatune をちょっと触ってみて気が変わった。なんだかいい音楽が流れているがアーティスト名を見ても一人も知らない。なんなのだろうか、Magnature とは?

We work directly with independent musicians world-wide to give you downloads of MP3s and perfect-quality WAV files. We never work with major labels, and our musicians always get 50%. You can listen to every album in its entirety before buying or becoming a member.

ということだ。なかなかいいではないか。そしてその中にとてもいいのもある。
しばらく聴いていて、一つ気になるミュージシャンが出てきた。Blind Divine という。Ambient 志向とPop志向の中間くらいの音というところか。とても聞きやすい。聴いている人の頭に優しい。

というわけで、いつも無料でインターネットから流しっぱなしにしてもよいのだけど、ダウンロードして買うことにした。CD一枚の値段を見ると、$8。やすっ。Download Member になると、何枚でもダウンロードし放題なので、もっと安い。会費は月20ドルくらい。「たいていの人は15ドルから40ドル払ってますから、自分で決めてください」だと。売上の半分はミュージシャンに行くのだから、「まっこれでもうまいもの食ってくれ」的気分で毎月20ドル払うことにした。月1000円でうまいものはないか。

Magnatune内のBlind Divine のページへ行けば、無料で聴けます。
http://magnatune.com/artists/blind_divine













Devouring The Beautiful by Blind Divine




たまには静かな一時をもちたい、が少し音も欲しいって人には最適もんかもしれない。

Sunday, May 10, 2009

Comedian-in-Cheif

日本でも政治家がとばすジョークというのはテレビが好んで流すが、ほんとに世間がおもしろいと思うようなジョークがその中にどれくらいあるのか甚だ疑問だ。おもしろくもなんともないと思うことがほとんどだっだように記憶している。何一つ思い出すようなものがないのがそのいい証拠かもしれない。

不気味なのは、そういうおもしろくもなんともないジョークをとばしている政治家を囲んでいる人たち、そのビデオを流すテレビに出ている人たち、みんな一様におもしろがっていることだ。そんな政治家が軽妙洒脱な話術でマスコミを煙に巻くやり手、とかなんとか評価されたりする(うげっ)。ほんとにそんなに笑えるほどおもしろいのだろうか。そういうのを見ると、何も分からず笑えないのは世界で一人だけなのだろうかと心配になってくる。

ほんとにおもしろくないから笑えない、無理に笑おうとすると、泣きそうになってしまう。みんなが笑っているのに一人笑わないというのは孤独だ。

Comedian-in-Chief というのは、Commander-in-Chief(国家の軍の最高司令官)をもじってるのだが、この言葉がテレビでもネットでもこの1、2日ほど使われ倒している。5月9日にオバマ大統領が White House Correspondents' Dinner で行ったスピーチのことなのだが、これが抱腹絶倒もの、プロのコメディアン以上におもしろかったのだ。最後には何気に話を渋い方向に持っていってしめる。うまいわ。CNNで何度も見て何度も笑った。久しぶりにゲラゲラ笑った気がする。Youtube に行ってとってきた。そのうち、和訳も出るんじゃないだろうか。下に張っとく。






Saturday, May 09, 2009

ゴミを運ぶアホ

また引越しの季節がやって来た。
生まれてから今までに何回引越ししたか数えてみたら、ちょうど30回だった。居所は大阪が13ヶ所、東京が3ヶ所、国外が14ヶ所だった。滞在期間が三カ月未満くらいの短いところを入れると、国外はあと5、6ヶ所の追加になるだろう。
生涯平均引越し回数というのはどれくらいなのだろう。ちょっと多いような気がするがいかがなもんか。

コペンハーゲンに引越してきたのは2007年の夏だから、ちょっとペース的には速い。一度も開けていないダンボール箱が僕の部屋にはまだ山積みになっている。移動は7月末か8月初めをターゲットにしているので、この際すべての箱を開けて徹底的に捨てる覚悟でいるのだが、そんな覚悟は過去20年くらいずっとしているので、どうなるか分からない。

冬に帰国している時にゴミの中に住んでいるおばあさんをいびるTV番組を見たが、僕にはあのおばあさんの気持ちがよく分かる。なんでも重要に見えてきて、捨てられないのだ。この傾向は歳をとるにつれ高まってきた。記憶力の急速な減退と関係があるのではないかとふんでいる。単に心理的なことだが、なんでも頭の中にいれておけた頃の余裕がどんどんなくなり、その代わりものを置いておくことで忘却を補っているような気分になっているのではないだろうか。もちろん現実には身の回りをものだらけにすることで事態はさらに悪化する。情報処理がますます困難になっていくだけのことだ。それでもやめられない。やがてゴミの中に住むおじいさんとしてテレビに出る所存だ。

今の家の処理、次の家探し、子供の学校さがし、運送の手配、その他もろもろの手続き、全部が一度に頭に出てこない。2年前に作った表がどこかにあるはずだが、それもなかなか出てこない。実に面倒くさい。世の中にこんな嫌な作業が他にあるだろうか。なのにどうしてこんなに引越しするのか。地球上のある地点から別のある地点へゴミを運ぶ、そしてストレスを思いっきり溜める。アホではないか。

Sunday, May 03, 2009

ピアノ

たぶん読んでからもう1週間か2週間経っていると思うのだが、まだ身体の中にフジコというピアニストの存在が残っている。ピアニストなのだから、音を聴いたことあるのかというと一度もない。本を読んだだけなのだ。
日本では、「今は」ものすごく有名人らしいので、いまさら、へーなんて感想を書いているのは相当にまぬけのようだ。全然知らなかったので、ネットを見てみたら、ほとんと信仰からおきまりのバッシングまでいろいろとり揃う。

アマゾンを見るとこんな感じ。「心に染みる繊細な音色の陰には、劇的な半生があった—。スウェーデン人の父と日本人ピアニストの母のもと、ベルリンで生を受けたフジコ。母の厳しいレッスンに耐えた少女時代、貧しいベルリン留学生活、音楽家バーンスタインとの出会い、そして聴力の喪失という悲劇。苦難をやりすごし、自分を見失わず、時を待ち…どんな時もフジコはピアノを弾き続けた。勇気づけられる自伝。」

う~む、これだけで財布を、いや本を開くかどうか難しいところだ。僕は魔法の編集者ショーコさんが送ってくれなかったら、きっと一生知らずに通り過ぎていたと思う。

たぶんピアニストとして絶頂期であるべき時期に彼女はpersonal な世界で過ごした。そうやって人生のほとんどが過ぎていく。本はとても短いものだ。長かった彼女のドイツでの生活部分はほんの少ししか分からないが、いくつかのエピソードを読むだけで、書かれていないことの大きさにばびるしかない。すごい人生を送った人だ。



ピアノの技術的なことは知らないが、僕にはしみた。

『フジコ・ヘミング 魂のピアニスト』 (新潮文庫)
フジコ ヘミング (著), Fuzjko Hemming (原著)
価格:¥ 500

Saturday, May 02, 2009

ご冥福を・・・

忌野清志郎が亡くなったとは。
なんだか身体が地球にのめりこんでいくような気分になる。

始めてギターを手にした時にこの人はこんなカッコいいことをしていた。時の経過を感じる。重いなあ。

Friday, May 01, 2009

寝ぼけて・・・

就業時間(というのが正確に何時から何時までなのか定かではないのだが)の終わりが近づくとNYから電話がかかってくる。6時間の時差があるので、こっちはもうやる気が失せかけ、むこうはまだやる気にならない、ちょっと素敵な組み合わせ。

ベッドに倒れこんだ人とまだ寝ぼけている人の会話を想像するとよいかもしれない。これ以上に不効率な会話ができる可能性のある組み合わせは新婚旅行から帰ってきて成田に着いたばっかりの夫婦くらいだろう。

なんでこんな日に働かないといけないんだと、旧社会主義国家出身の同僚は電話のむこうで憤っていた。5月1日は1年で一番大切な日だったのにと言っていた。なるほど、そういうものなのだ。労働者の日だもんな。

旧ソ連に属していた国とか、その回りの社会主義国から来ている人と話していると、冷戦時代に一度くらい東側ブロックに行っておきたかったものだとよく思う。”腐敗した”西側世界とはまったくの別世界が存在していたわけで実に興味深い。おもしろいことに、その当時を全面擁護するガチガチの共産主義者のような人には出会ったことがないが、その当時の社会システムを全否定する人にも出会ったことがない。どうやら、”悪の帝国”ではなかったらしい。

デンマークに住んでいるのだから、出会うのはヨーロッパの人が圧倒的に多いわけだが、ヨーロッパといってもなかなか広く、多様だ。西ヨーロッパと東ヨーロッパという分け方はあまりに粗雑だけど、便宜上そう分けて話すと、西ヨーロッパ人と日本人がほんとに心の底から溶け合うなんてことはまず永久にないのではないかと思う。どうしようもなく、根本的に違うところが精神の奥深くにあり、この溝は埋まるものではないのだろう。

といっても、普通に人間付き合いするにあたって、すべての人と心が溶け合う必要は毛頭ないわけでプラクティカルには問題ないとも思う。

しかし、それに比べて東ヨーロッパの人にはどうも裸感が湧き上がってきて、すぐに懐に入り合う関係になる。アジア系がもっている「ねっとり入ってきますよ」って感覚を彼らは自然に持っているのだ。だから、ルーマニアやブルガリアやアルバニアやボスニアやアゼルバイジャンやアルメニアやタジキスタンなんかの人とは、素の自分で話しているなと思う。

労働者の日を剥奪された彼といかにして世界を救うかについて2秒くらい話して、あと59分くらい、いかにして自分たちを救うかの話に専念して、まだこの世に救いはないので、飲みにいこうという結論に達した。

そんなアホ会話のあと、ぼーっと放心しながら、足を交互に前後ろに動かして、オフィスから家までひたすら前進していたら、あれっ、5月1日?聞き覚えのある日付。そうだ、ゴールデンウイークというものが日本では始まっているのではないか。

僕はもう取れる休みを使いまくったのでほとんど永久奴隷状態だ。次の手術をする休暇が足りないと、今日担当者が親切にも教えてくれた。

この右肩、やはり固まってる。フィジオでは無理なんだ。一回350クローネ(6200円)ってぼったくりのような気もするがデンマークの相場かもしれない。いずれにしろ、これ続けても治りそうにない。

Friday, April 24, 2009

Flock というブラウザーのこと

まだ使い始めて3日目だけど、その使いやすさにうれしい驚き。Facebook, Digg, Twitter, Blogger, Youtube, Flickr, Yahoo, Gmail, RSS, の中に一つでも身に覚えののある人は、速攻でFlock をダウンロードして使うがよい。中身はFirefox なので、すでにFirefox を使っている人は同じAdd-onsが使えるので安心してよい。IEから脱出するなら尚よい。少しヴァージョンは落ちるが日本語版もあるので、ローマ字が嫌いな人も使える。デスクトップにでもダウンロードして、それをダブルクリックしてトイレに行って帰ってきたら夢の世界が開いているでしょう。

無料ダウンロードはこちら(→)


いろいろ使い勝手を試しているところ(↓)。

Tuesday, April 21, 2009

夢の小便

5歳の次男を夜中におしっこに連れていくという重要任務がある。言うまでもなく、オネショ防止策だ。だいたい12時から1時の間に僕が連れていくのだが、熟睡している子供を起すのは気が引けるものだ。

何語か分からないが、次男はおしっこのことをピシと呼んでいるので、耳元でピシ、ピシとささやいてみる。まったく微動だにしない。肩をもって少しゆすってみるが、まったく変化なし。しかたないので、両腕の下に手を入れて次男を持ち上げる。すると、猿のようにくるっと両足を僕の胴体に巻きつけてくる。夢と意識の間くらいにいるのかもしれない。

倒れないように、両わきの下を支えたままトイレの便器の前に立たせると、ふらふらしながらも自分でパンツをさげる。僕がそこで、またピシ、ピシというと、ちょろちょろちょろっとおしっこを始める。その間にも頭はたら~っと横に倒れ、身体も倒れそうになるので、しっかり支えておかないといけない。

去年の12月、僕の右肩の痛みが激しくなるにつれ、この毎晩の日課がだんだん厳しくなってきた。次男の体重は20キロほどだ。だんだん重くなってきたように思った。子供はすぐに大きくなる。なるべく右肩に力が入らないように工夫して、この日課を続けていた。うっかり忘れると半分くらいの確率でオネショをする。そして母親の機嫌を朝から台無しにする。これを避けたくないものは歴史上、世界中に一人も登場していないだろう。

こんなに重くなってきては、いずれこれも続けられなくなる。早く自分でめざめて自分でおしっこに行けるようにならないとダメだと何度も次男には言うが、いったいどういうきっかけで人間はそういうことを覚えるようになるのか、そこのところが分からない。

しかし、絶体絶命の日がとうとうやってきた。右肩の手術の前の日、次男に予告しておくことにした。明日の朝、お父さんは右肩の手術をするのを知ってる?明日の夜はお父さんは右腕がつかえないから、もうだっこしてトイレに連れていけないよ。自分でちゃんと起き上がってトイレに行かないとダメだよと。

手術の夜、ちょうど麻酔切れの痛みがピークに達している頃、次男の耳元でピシ、ピシとささやいた。すると、なんと驚いたことに、自分でむくっと起き上がったではないか。ベッドからはい出てふらふらとトイレに向かって歩き始めた。こけるのではないかと、思わず右手を出しそうになって、激痛に叩きのめされ、一人頭の中で悲鳴をあげた。左手で次男の身体を支えようとするが、どうもそんな必要もなく、目をつぶった酔っ払いのようにふらふらしながら、次男はちょろちょろちょろっとおしっこをしていた。まだ夢の中なのだろう。

今日いつものようにピシ、ピシと耳元で囁いたがまったく動こうとしない。しょうがないので、また抱きかかえてトイレに連れて行った。ふと気がついた。なんだ、まだこんなに軽かったのだ。重くなってきたと感じたのは自分の右肩のせいだったのだろう。

Thursday, April 16, 2009

きつっ

イースター開けからオフィスに行き始めた。最近は太陽が出ているので、外を歩くのは気持ちいい。夕方になるとちょっと寒いのだが、すでに7時くらい迄明るい季節になってきた。

Physiotherapy は毎週三回行ってるにも関わらず、医者の楽観的な予測をはるかに下回るさんざんな進捗しかない。右肩がもう一つの固まった物体となってしまって、それを破壊しなければいけないのだが、どんな拷問、元へエクササイズをしたところで、結局、その塊全体をまわりの筋肉を使って動かしているだけで、なんの効果もなくても当然ではないかと思うのだが、いかがなもんか。

Physiotherapist のトロールって兄ちゃんは、今僕の家族の次にダントツでもっとも頻繁に会う人だ。普通、週三回以上も会うってのは家族以外では職場の人くらいになるだろうけど、職場では顔を見てちょろっと挨拶するだけってのも多いから、週三回、二人で汗かいて真剣勝負になるとどうしても情がわいてくる。こんなの効かないよなんてことは絶対言えない。ほんとに分からないんだし。

でも、もうこれは十中八九確実にもう一回手術するはめになるだろうと思う。次回は日本でしたい。肩ならまかせろっていう良い医者・病院情報、大歓迎です。

机の上に右腕を置きつづけている姿勢はやはり予想通り、みかけによらず重労働であった。腕をまっすぐ下におろしてぶらぶら歩くだけなら何も感じないのだが、机の上となると、やはり右肩全体で漬物石を担ぎ上げるような筋肉の使い方をしている。これではなかなか持ちそうにない。今日は首のうしろが痛くなったが、これは首やその回りの筋肉をつかって重い右腕業界を支えていたからだろう。

おー、先は長そうだ。

Sunday, April 12, 2009

読書めも - Children are from Heaven

ほんと同感なので。
CHILDREN ARE FROM HEAVEN, John Gray, Ph.D. (pp. xxiv-xxv)より。

---Past parenting approaches sought to create obedient children. The goal of positive parenting is to create strong-willed but cooperative children. A child's will doesn't have to be broken in order to create cooperation. Children are from heaven. When their hearts are open and their will is nurtured, they actually are more willing to cooperate.

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The goal of positive parenting is to create
willful but cooperative children.
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---Past parenting approaches were aimed at creating good children. Positive parenting creates compassionate children, who don't have to be threatened to follow rules, but spontaneously act and make decisions from an open heart. They do not lie or cheat because it is against the rules, but they are fair and just. Morality is not imposed on these children from outside, but emerges from within and is learned by cooperating with their parents.

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Rather than seeking to create good children,
positive parenting seeks to create
compassionate children.
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---Past parenting approaches focused on creating submission; positive parenting aims to develop confident leaders, who are capable of creating their own destiny, not just passively following in the footsteps of others before them. These confident children are aware of who they are and what they want to accomplish.

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Confident children are not easily swayed by peer
pressure nor do they feel the need to revel.
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(PP xxxii-xxxiii)

---The five positive messages are:
1. It's okay to be different.
2. It's okay to make mistakes.
3. It's okay to express negative emotions.
4. It's okay to want more.
5. It's okay to say no, but remember mom and dad are the bosses.

これは、ここだけ取り出すと誤解の可能性大なので、要注意。

---These five messages will set your children free to develop their God-given abilities. When practiced correctly with the different skills of positive parenting, your child will develop the necessary skills for successful living. Some of these skills are: forgiveness of others and themselves, sharing, delayed gratification, self-esteem, patience, persistence, respect for others and themselves, cooperation, compassion, confidence, and the ability to be happy....

そうあって欲しい。

Friday, April 10, 2009

Future

五歳の次男はどうも最近、無限という概念に突き当たっているように思える。
いつだったか、1、2か月前だったと思うが、「数はいつ終わるの?」ときかれた。

数が終わる?直接的にはいつ数え終わるかという当面の問題を抱えているうちに、数はどこまで行くのかという疑問に発展したのだろう。

終わらないよ。いつまでも続く。永久に続く。という僕の回答は実は回答になっていない、ということは分かっている。彼の頭の中にある疑問は、終わらないということはどういうことなのか、いつまでも続くということはどういうことなのか、ということなのだ。ほとんどの大人の訳知り顔で子供にする説明は底が抜けたバケツのようにマヌケなもんだ。また一発僕もここでマヌケをかましたわけですが。

この疑問は僕にとっても解けずにずーっと心の中にしまっていたものだと白状する時期がいつか来るだろう。その時には二人で無限の恐怖と希望に立ち向かえたらいい。

一つ去ってしばらく立った頃に、もう寝るよというベッドの中で、ひょこっと、次男がきく。

"Papa, when is going to be future?" (いつ未来になるの?とでも訳すか)
"Uhhhhnn, future is..., ahh, uhh, for example, tomorrow is future, next week is also future, next month is also future. Any time after now is future.

たぶん、いや確実にこの回答では彼のもっと根本的な疑問の回答にはなっている。次男はしばらく考えて、

"Then they are going to make a flying car in future? ときく。
"We don't know when, but maybe somebody will make it. When I was a small child, we didn't have a computer. But then somebody made it, and now everybody uses it."
"So who will make a flying car?"
"You, make it. You can make it if you want."
"But I don't know how to make it. I know how to make a cup with clay, and I know how to make a stamp with clay, and I know..."

(そしたら、未来に飛ぶ車ができるの?
(いつか分からないけど、でも誰か作るでしょう。僕が子供の時はコンピュータなんてなかった。でも、誰かが作って、今はみんなが使ってる。)
(じゃあ、誰が飛ぶ車を作るの?)
(おまえが作ればいい。作りたければ作れるよ)
(でも、作り方が分からないよ。粘土でコップを作れるけどね。粘土でスタンプも作れる。他にも、何があったかなあ・・・。)

なんとも可愛いではないか。自分のできること一覧が彼の頭の中にはあるのだ。おもしろい、でもまだ未来という概念については解決していない。

"Then when was the past? "
"Yesterday is the past, last week is also past, Any time till now is the past. Papa was born in the past."
"So you didn't have anything? No car? No washing machines? No TV? God just made the world?"
"Ah, I was born long, long after the world was created. When I was a child, there were already TV, car, washing machines etc. but just not computer yet."
(じゃあ、いつが過去?
(昨日は過去、先週も過去、今より前は全部過去。パパは過去に生まれた。)
(そしたら、パパは何もなかったの?車も、洗濯機も、テレビも。神様が世界を作った時でしょ。)
(あー、パパは世界ができてから、ずっと後に生まれた。だから子供の頃にはもうテレビも車も洗濯機もあった。でもコンピュータはなかった。)

"I think you should go to sleep now"
"Un, I will make something else with clay next time"
"Ah, you talked about future. You just said that you will make something in future. Next time is future."
"Oh, yeah, next is future? OK, I got it."

(もう寝た方がいいよ。)
(うん、次は粘土で何か他のもの作る)
(あ、未来について話した。何か未来に作るって言ったんだよ。次ってのは未来ってこと。)
(あー、そうか、次は未来か。分かった。)

数分後にはすやすやと寝息を立てていた。彼の頭の中で今何かが繋がって行ってるのだろうか。

カブール再考

帰国している時に茶色袋昼食で話したことがウェブに出ていた。ここ↓
http://www.fasid.or.jp/chosa/forum/bbl/bbl_20.html

テープ起こしという作業もかなりグアンタナモ系な、つらい仕事だし、話ももたもたしていたのに手際よくまとめてくれている。
プレゼン資料は重すぎたのか、クリックしたら固まってしまった。

グアンタナモ系の日々

フィジオセラピーとグアンタナモの関係についてはっきりさせておいてほしい。動かないものを動かそうとして苦痛を与えることと、動くはずだが動かないものを苦痛を乗り越えて動くようにすることの間に、当事者的にはほとんど違いがない。


これ(例えば↑みたいなこと)を三ヶ月続けてもきっと何も変わらないだろうと思う。今日は金曜日だが、水曜日の痛みが残って昨日はなかなか眠れなかった。

* * *

ところで、Linux 関係の話は単なる備忘録になっているので、別枠で保存していくことにした。こっちにあります→ yobuntu

Sunday, April 05, 2009

しょぼっ

全然あかんわ。やっぱり13日金曜日という日付が効いたか。
手術から3週間経ったが、改善の気配はなし。痛かっただけかいな、ほんまに。
いやぁ、痛かったなあ、手術の後。深夜一人で家の中をのたうち歩き回りました。

3月13日金曜日の朝7時15分に集合ということなので、遅刻してはいけないと前日からはりきり過ぎてほとんど寝ずに病院に行った。病院に着くと、他に手術する人が二人いた。僕を入れたこの3人が今日の第一ラウンドらしい。

アレルギーはないかとか、薬は飲んでないかとか、すでに紙に書いて提出したことをまた二人の人に別々に一回ずつきかれる。右肩か左肩かどちらの手術かという質問をするのでやや笑えるが、間違えられると困るので、真面目に答える。

右肩から先を完全に麻酔で麻痺させるために肩というより右胸の上の方に、麻酔医が何か差し込んだ。ディスプレイに写っている画像を見ながら、神経を探しているらしい。ぼーっとその画像を見ていると、無意識にギャッと叫んでしまった。神経を探り当てたらしい。そこで止まって、麻酔薬を注入し始めた。

15分ほどすると、腕の感覚がなくなった。手術室に移動するのだが、誰かが僕の右腕をもたないと、右腕だけ付いてこない。これはかなりやっかいだなと。

手術室に入ると、3人ほど女の人がいた。「ハーイ、私は○○よ、お元気〜?」みたいな調子に乗った挨拶をそれぞれがする。こっちは右腕が自分に付いてきているかどうかが気がかりで、そんな気分じゃないんだって。

手術だからてっきり全身裸にされて、エプロンみたいなものを着せられるのかと思っていたが、脱ぐのは上半身だけで、下はジーンズをはいたまま。日本でもこういうものなのだろうか。

手術室に入ってくる前にすでに、左腕に注射針が突っ込まれて固定されていて、胸には三箇所くらい吸盤に電線が付いたようなものを付けられていたのだが、手術室ではさらに鼻の穴に酸素チューブを突っ込まれた。完全武装をしたような気分になる。

また、テレビ画面のようなものがあり、それで右肩の中身を見ながら手術を受けるかどうか、音楽を聞きたいかどうか、そんなことを訊かれるが、前夜からの興奮状態がピークを越えていて、すでに疲れて、やや吐き気がしていたので、眠りたいと答えた。そしたら、また素っ頓狂に景気良く、「わかったわぁ、じゃあ、眠らせてあげるわネ」みたいな返答が女の人から返ってくるので、やや不安になって、「いつ起きれますか?」と即座に訊いた。すると「手術が終わったら直ぐよ、直ぐに起こしてあげる」というではないか。ますます不安になる。眠り薬を腕から入れるのか鼻の穴から入れるのか知らないけど、そんなに簡単にスイッチを入れたり切ったりするみたいに寝かしたり起こしたりできるのだろうか。そんなことを考え始めたが途中ですでに意識はなくなっていた。

* * *

パッと目が覚めた。妙に鮮やかな目覚め。まわりを見渡してみる。手術室に行く前の部屋だ。壁時計を見ると、最後に見た時から、ちょうど1時間しか経ってない。そんなバカな、と思うが、僕のまわりの事態は実に普通に続いているので、その通りなんだろう。確かに医者は1時間くらいで終わるとは言っていたが、いろいろな手間も入れると1時間ちょうどというのは早すぎるのではないか。

僕が目覚めたことに気づいた看護婦さんが、「ハーイ、気分はどう?何か欲しいものある?」と訊く。気分は悪くない。3日間寝たくらいすっきりしてる。しかし、やけに喉が乾いている、と言うと、水を入れたコップを持ってきてくれた。思わず意識ではそれをとろうと右腕を動かすのだが、何も起こらない。右腕がなくなったのかと思って、見てみると右腕はまだそこにある。が、まったく微動だにしない。コップをもった看護婦はニコニコしながら、ストローを口まで持ってきてくれた。

「手術はどうだった?」ともっともあり得べき質問をすると、医者がすぐ来るから彼に訊いてちょ、だと。まあ、それもそうだと納得。

しばらくすると手術をしたタコに似た顔の医者が来た。気分はどうだとまた訊かれる。いいよ、いいよ、それより手術はどうだった?ときくと、石灰化した部分が見つからなかった、と言うではないか。はあ?手術前にレントゲン写真を見て、あれほど確認したのに、見つけ損ねたのか、このタコ。

なんか形勢不利と感じたのか、即座に医者は、「いや三箇所から入って調べたんだ、でも・・・」と言って、ちょっと肩を落としてうつむいてから、「それでも関節の部分をきれいに削ったから、もう肩は動くよ、ほら」と言って、まったく感覚のない僕の右腕をつかんで上に上げてみる。で、次に医者に会うのは三ヶ月後だという。そんなもの?せめて一週間くらいしたら、手術がどうだったか見てみるとかそういうことにはならないんですかね。

で、月曜日からフィジオセラピーに行けだと。それって、3日後でしょ。人の体に三箇所も穴開けた人の言うことかね。穴から一斉に血吹き出したりしたらどうすんの?いやぁ、ダメ臭い。これはダメ臭いと思った。でも、もう終わったことだから、しばらくそれなりに経過を見てみるしかないと強引に納得。

* * * 

昼頃には退院。直前に看護婦から12時間から14時間で麻酔が切れるから、痛くなったら、これとこれを飲んでと二種類の薬を渡された。そして、かなーり、もったいぶって、どうしても痛みが耐えられなくなったら、これを飲んでともう一種類カプセルを渡される。

そんな話をしている時に、なにかゴトンと漬物石のように重みのあるものが落ちる気配がしたので、はっと下を見ると自分の腕ではないか。看護婦が笑って、「あなたの腕よ、まだあるわよ」と言って、僕の右腕をつかんで持ち上げる。まったく感覚がないので、異物のように扱わないといけない。これはかなり注意しないと家に到着するまでに右腕を傷つけてしまいそうだ。

家に到着すると、大成功という喜びはなかったものの、やっと終わったという興奮が続いていて、落ち着かない。右腕を左腕で保護しながら、立ったり座ったり歩いてみたりする。そのうちに子供が帰ってきて、不思議そうに見ながら、腕をどうしたときくが、なんとこたえても納得させられそうにないので、右肩の中からゴミをとったと答えた。

晩ご飯が終わった頃から、右腕の感覚が本格的に戻ってきた、と同時に、なんとも説明不可能な痛みが右肩全体に沸いてきた。鮮烈な痛みではなく、そこ深く意地悪いおもーい痛みだ。右肩三箇所に釘を打ち込んで抜いてみるとこんな感じで痛むんだろうと思う。拷問反対。

みんな寝静まった夜中に痛みがピークに来たようだ。そんな怪しげなもの飲んでたまるかと思っていた三種類目のカプセルにとうとう手を出してしまった。これはなんなのだろう。頭をどこかでゴーンとぶつけた時にくらっとする、あのくらっによく似た感じを覚えた。そして確かに痛みは和らいだような気がする。しかし、完全除去というわけにはいかない。結局、朝まで何もできず、家の中をうろうろして、ただ痛みをしのいでいた。

Saturday, March 07, 2009

自由か安定か

これは圧勝だったのだ、と思う。むしろ唖然とするというか。いや、しつこくLinuxの話ですが。
ほとんど何もわけが分からないまま、ちょろちょろと触っているだけで、その世界の広さが少しずつ見えてくると、WとかMの世界がなんとせせこましかったのかと思う。Linuxには巨大な自由がある。Free で、Openというのは、我々の住む世界の念仏と違って、文字通りLinuxではほんとの話だった。

しかし、これがなんというか、とても悩ましい現実を生んでいると思う。僕はLinuxが世界中に革命的に普及すればよいのにと願ってやまないけれど、人間は果たしてそんなに自由を望むだろうか。自由はつらいものでもある。自分で考えたり、決断したりしないといけない。自由からの逃避は、自由な社会が多数の人間にとっても現実のものとなり始めた20世紀の特質ではなかったか。もうすでに自由まみれで困っている、コンピュータごときで頭を使いたくないと思ってもおかしくない。テレビのように買った時にほとんど何もかも仕組まれていて、自由の範囲は電源とチャンネルと音量くらいで十分ではないだろうか。そうすると、WとかMは非常にいいさじ加減の拘束を与えてくれているのかもしれない。

単にマーケティングの問題だけではなく、自由を選択する人が多いのか、自由からの逃避を選択する人が多いのか、それがLinuxの普及に反映するような気がする。

* * *

ところで、今日Plasma Workspace という、ディスプレイの見栄えを管理するらしいアプリケーションがクラッシュしてしまった。画面が真っ暗になってしまって、にっちもさっちもいかない。強引に電源を落として、起動し直してみると、どうやら画面が見えない以外のことはすべてちゃんと動いているようだ。暗い画面の裏に光も見えるし、音もなるし、インターネットにまで繋がっている。しかし、どうやって直したらいいのか。Ubuntuのコミュニティに質問を送ってみたが、回答してくれた人の内容も僕にはいまいち理解できない。しょうがないから、Linuxのコマンドについて書いてあるサイトをぼちぼちと読み始めた。

しかし、直るまでこのコンピュータを遊ばせておくのももったいない気がするので、パーティションを入れて、Ubuntuを入れてみた。一つのコンピュータにKubuntu 4.2とUbuntu 8.10が入っている。

Ubuntu 8.10は、驚くべき安定さを持っている。Kubuntu と同じように、英語版をインストールして、後から日本語入力用のソフトを付け足したのだが、Kubuntuとは比べ物にならないくらいあっさりと動き始める。もちろん、普通のユーザーが使うようなアプリケーションソフトはすべて入っている。インターネットやプリンタードライバーも何も設定する必要がない。勝手に動けるようになっている。Linux陣営の中でUbuntuが急速に普及し始めているのもうなずける。すぐ使える、という状態のセットになっていること、過剰な自由を放置しないという点で、UbuntuはLinuxの世界を少し更新したのではないだろうか。

Monday, March 02, 2009

UK government backs open source

大英帝国政府がITシステム全体の見直しをしている。オープン・ソース−つまり、Linuxとか−に入れ替えると年間600万ポンド(850億円くらい)の節約になるという。この厳しいご時世なら、これは真剣に考慮した方がいいってことになるだろう。ものすごい抵抗があると思うが頑張っていただきたい。

UK government backs open source
BBC NEWS  2009/02/25 15:13:37 GMT

The UK government has said it will accelerate the use of open source software in public services.
Tom Watson MP, minister for digital engagement, said open source software would be on a level playing field with proprietary software such as Windows.
Open source software will be adopted "when it delivers best value for money", the government said.
It added that public services should where possible avoid being "locked into proprietary software".
Licences for the use of open source software are generally free of charge and embrace open standards, and the code that powers the programs can be modified without fear of trampling on intellectual property or copyright.
According to some in the open source industry, the shift from proprietary standards could save the government £600m a year.
Simon Phipps, chief open source officer for Sun Microsystems, said the UK government's stance was part of a "global wave" of take up for open source in governments.
“ Open source can help avoid many of the hidden costs of proprietary software ”
Steve Shine, Ingres
"We waste a fortune on proprietary computer software because of paying for licences and promises up front and not demanding value," he said.
Mr Phipps said schools, government departments and public services would have a "crucial freedom" because of the choice of whether to pay for support and training when using open source software.
The government's action plan could see a wave of open source software being deployed in areas such as office applications (word processing and spreadsheets), document management and database infrastructure, the backbone of many large-scale IT systems.
'More teeth'
Steve Shine, European vice president of Ingres, an open source support vendor, said the government's action plan had "more teeth" than policies being adopted in other countries because the plan was tied into policies regarding how IT managers procure new software.
He said the move had partly been driven by a series of high-profile IT failures in recent years that had relied on proprietary software.
He said: "Open source can help avoid many of the hidden costs of proprietary software such as making organisations re-pay for licences if they want to shift use of a particular piece of software from one place to another.
"This is irrelevant in the open source world."
Announcing an open source and open standards action plan, the government said it would:
ensure that the government adopts open standards and uses these to communicate with the citizens and businesses that have adopted open source solutions
ensure that open source solutions are considered properly and, where they deliver best value for money are selected for government business solutions
strengthen the skills, experience and capabilities within government and in its suppliers to use open source to greatest advantage
embed an open source culture of sharing, re-use and collaborative development across government and its suppliers
ensure that systems integrators and proprietary software suppliers demonstrate the same flexibility and ability to re-use their solutions and products as is inherent in open source.
Government departments will be required to adopt open source software when "there is no significant overall cost difference between open and non-open source products" because of its "inherent flexibility".
Expected backlash
Mr Phipps and Mr Shine said they expected a backlash from proprietary software firms.
"I am absolutely certain there have been communications extremely high-up in proprietary vendors with management high up in government," said Mr Shine.
Mr Phipps added: "Measured over the short term traditional vendors will cut prices back, end load contacts and do everything to appear cheaper.
"But the real value with open source comes from giving users a new flexibility."
He said the widespread adoption of open source software in public services could also have a knock on effect to the ordinary consumer.
"It's already happening to significant extent in the UK. Lots of homes are using Firefox and OpenOffice.org.
"It is becoming acceptable and expected."

Story from BBC NEWS:
http://news.bbc.co.uk/go/pr/fr/-/1/hi/technology/7910110.stm

Published: 2009/02/25 15:13:37 GMT

© BBC MMIX

Saturday, February 28, 2009

するする育つ

春に新学期が始まる、日本式の数え方なら、長男は今小学校の3年生で、4月から4年生になるはずなのだが、日本語がいまいち頼りないので土曜日の日本語補習校では今2年生に在籍している。平日に行っているインターナショナル・スクールでは普通どおりの学年で、かつ秋に新学期が始まるので、こっちは4年生に在籍している。つまり、一人で2年生と4年生である、という妙なことになっている。

1年下の学年に入っているにもかかわらず、ひらがながちゃんと読めない、漢字を覚えてこない、このままでは進級させられないと、日本語補習校の先生には何度も脅されていた。小学校に進級とか落第とかそんなものあるのかと思ったが、宿題はめったにしているようすはないし、復習も予習もそんな概念さえまだ持ち合わせていないので、先生の脅しにあえて抵抗する気にもならなかった。狭い世間にきいてみると、親がちゃんと子供の勉強をみないとそういうことになって当然だという意見が多く、それに安心もしていた。

先週の土曜日は学年最後の学力テストだというので、家でゴロゴロしている時間を有効に使おうと試みて、時々国語の教科書を引っ張り出してきて、長男に読ませていたりした。しかし、テストならそれなりの対策をしないといけないだろうと思ったが、まずテスト範囲というものが分からない。仕方ないので、前日になって同級生のお母さんに電話をしてきいたが、話に出てくる学校で配られたプリントというのがどれだか分からず、結局うやむやにしたまま話は終わった。

昔と違って、日本語補習校もインターナショナル・スクールも学校からはEメールで連絡をどんどん送ってくるので、日本語の先生のメールを遡って読んでみてだいたいのことは分かった。で、テスト勉強らしきことを長男としたのだが、おもしろいことに気がついた。「音」とか「ようす」をあらわす言葉というのが教科書に出てくるのだが、長男はこれがほとんど分からないのだ。犬は日本語ならワンワンと鳴くが、英語ならばバウワウと鳴く、というやつだ。すべての動物が日本語でどうなくかなんて僕も分からないが、生活圏にいる動物の鳴き声くらいなら分かると思う。そうやって日本語で鳴いているのだから。

「ようす」を表す言葉というのはさらに悲惨なことになる。「もりもり」が食べるようすを表す言葉だなんて、日本語でもかなり上級ではないだろうか。日本人にはバカバカしいほど簡単な問題、例えば、次の二つのグループをちゃんと繋げるというような問題は非常に手強いことになる。

1、サルが木に登る
2、赤ちゃんが育つ
3、葉が落ちる

ア、すくすく
イ、はらはら
ウ、するする

長男の世界では、サルがはらはらと木に上り、赤ちゃんがするする育ち、葉がすくすくと落ちるのだ。それのどこが悪い、と言いたくなるが、コミュニケーションの道具である以上、とりあえずは世間で共有されている言い方を覚えないと意味がない。言語は生活の中で覚えるべきなのだ。

* * *

今、長男は自分のコンピュータが欲しいようだ。10年前の古いコンピュータを引っ張り出してきて、Xubuntuを入れようと格闘している僕をみて、そのコンピュータが直ったら、どうなるのかと母親に訊きにいったらしい。母親はあっさりとそんなことはお父さんに自分で聞け、と言っておしまいである。

これはお前にやるために直しているのだ、という以外の回答が思いつかなかった。その10年前のしろものはみるからに古くさく汚いコンピュータなのだが、長男は飛び上がって喜んだから驚いた。家族が共有しているコンピュータは、Vaioのかなりハイエンドなものだから、1年くらい前に買ったものでも、Vistaが載っているにもかかわらず、ガンガンと剛球のようなスピードで動いているし、何よりも10年ものよりカッコもいい。しかも、家族の共有といっても、母親はGmailのチェックの仕方と、Skypeでの電話のかけ方しか知らないから、平均して一日10分も触ってないだろう。5歳の弟は兄がオンライン・ゲームをする時に横につきそい、本人はなんとか参加しようとするのだが、長男からすると、結果的には考えられる限りすべての邪魔をすることに熱意をもやしているように見えてしまうわけで、争いが耐えない。ともかく、長男が使う時間が圧倒的に多いのに、それでもVaioより、このボロ臭いコンピュータが欲しいというのがおもしろい。これはやはり所有するということに潜む魔法なのだ。共有と所有の間には、男と女の間の溝くらいに深くて暗い、決して埋まらない溝が存在する。

「所有する」という感覚、そこから来る愛着や責任、それが人間の集まりである社会の基礎になっている。ある個人にあるものがLocked inされるという方が分かりやすい表現かもしれない。Locked in されたものをその個人が大切にする。大切にされたものが集積すると大切な社会ができる。共有とはいうのは誰にも、どの個人にもlockされていないということだ。鑑賞をすることはできる、愛でることもできる、でも大切にはしない、どうせ自分のものじゃないのだから。だから、「公」という概念は実に微妙だ。「公にものを大切にしましょう」というスローガンはあまりに空虚に吹き荒れては、そのまま吹き飛んで行く。

しかし、「公」という概念が必要なことには違いないのも事実だ。すべてのものを個人の所有に振り分けるわけには行かないのだから。じゃあ、「公」にもっとも必要なものは何か、もっと凄みのきいたスローガンだろうか。僕はそう思わない。とても単純なことだ、それは「公」に帰属しているという感覚のみだ。帰属意識というのも、また一つの魔法的な感情だと思う。帰属するという感覚を持つことによって、その瞬間からその人のメンタルマップの中で「公」が擬似私物的な位置づけを得るのだ。所有のもつ炸裂ドライブよりはすこしスペックは下がるかもしれないが、愛着から責任の精神の力学がここで起動する。だから、人々が帰属意識を持てないような国家、企業、集団、家族は、問題だらけとなる。

僕はありとあらゆる社会科学に首をつっこんだが、こういう人間の心理のダイナミズムとか心のあやというか、とらえどころのないものををうまく”科学”的なものに合成していかないかぎり、トンデモ政策はあとをたたないだろうという結論にいたった。あえてスローガンにすると、科学から情へ、情から科学へ、ということなのだが、専門の社会科学者から見れば笑止千万なのだな。

* * *

テストが終わってどうだった?と聞くと、うーん、国語は全部できた、算数の問題が一つ漢字が分からなかったからできなかった、という。文章題に出てくる漢字が分からず、問題の意味が分からなかったのだ。家で練習していた時にもそういうことはしばしばあった。そんなことは先生にきけばよかったのにと言ったが、こういうところだけ、控えめさを(日本的美徳、とは思っていないだろうが)、そんな習慣を学んでしまっている。インターナショナルスクールでは、すべての生徒が同時に質問をし、まるで動物園かとみまがうほどの騒乱状態になる。この歳にしてすでに、郷に入れば郷にしたがえ、なんてことも学んでしまったのかもしれない。

とりあえず、テスト勉強には成果があるという経験ができたことは良かった。テストの直後に先生にあったが、「よくできてました、これなら進級させようと思います」だと。こういう時、普通はお礼を言うものだろうと思ってお礼を言ったが、いったいこれは何に対するお礼になるのだろうか。このテストにもっとも貢献したのは長男本人なのだが、彼はそんなことにはまったく関心もなく、すでにグランウドでサッカーをして騒いでいる。

* * *

10年前のコンピュータは結局スペックが低すぎた。どうにもならん。翌日、それを長男に言うと、明らかに落胆したようだった。親として子供の落胆する姿ほど見たくないものはない。ここで、宣言した。

次の誕生日(7月22日)までにブラインド・タッチができるようになれば、僕のコンピュータをやる!と。

長男の目がまた輝いた。最初は、最近僕が買った小さなネットブック(EeePC S101)をもらえると思ったようだ。しかし、最初に小さいキーボードを覚えてほしくない。あれじゃない、あれより性能が高くて大きい方だ。それでも、当時では一番薄く、一番軽かったコンピュータなのだ、というと、これは元々スタイリッシュなデザインでもあるので、長男の目はさらに輝いた。(dynabok SS SX/290NRというのが3年前に買ったやつ)

さっそく家族コンピュータのVaioに戻って、僕がインストールしておいたRapid Typingで、タイピングを練習し始めた。実際、最初にちゃんとブラインド・タイピングを覚えていないと、その後のコンピュータ人生の半分くらいの時間を浪費するのと同じことではないかと思う。だから、ここは強調してきっちりできるようになったら、お下がりではなく、新品を買ってやろうとかと思っている。

僕が彼にあげると言ったのは、先日からKubuntuを入れて実験的探求をし続けているやつで(dynabook SS)、そのうち僕がメチャクチャにしてしまう可能性も十分ある。今は安くて良いコンピュータが売っているので、息子にあげるのはこれにこだわる必要はないだろうと思って、ネットで今手に入るコンピュータをサーチしたが、OSを何にするかという根本的なクエスチョンには困る。学校ではもうITの授業をやっているので、一度話を聞こうと思うのだが、おそらくWindowsベースだろう。学校に合わせる必要もないが、Windowsにまったく触れないと世間で困ることがでてくるだろう。結局こうやって悩んでみんなWindowsを使い続けるのだろう。ここはこの悪の連鎖を断ち切りたいものだと。

DellがUbuntu搭載のPCを売っているではないか、ネットブックにはLinux搭載のものが他にもあるのを知っていたが、Inspiron Mini 12 というのは、その大きさから言うとネットブックとラップトップの中間くらいに見えるが、これにUbuntu搭載モデルがあるのを発見した。しかも、39800円。なんてことだろう。デンマークで下手なメシを一回食ったら終わってしまう値段だ。仕事でドバイで止まるホテルより安い。オフィスで支給されているスマートフォンより安い。

DELL Inspiron Mini 12 Ubuntuパッケージ
インテル(R) Atom(TM) プロセッサー Z520 (1.33GHz, 512KB L2キャッシュ, 533MHz FSB)
Ubuntu 8.04 (DELL カスタマイズ版)(最高)
1GB DDR2-SDRAM メモリ(この値段なら良しでしょ)
12.1インチ TFT TrueLife(TM) WXGA 光沢液晶ディスプレイ (1280x800)(いいサイズ)
40GB PATA HDD (4200回転)
(SSDなら尚良し)
光学ドライブなし(しゃあないでしょ)
内蔵ワイヤレスLANカード (802.11b/g対応)
インテル(R) GMA 500 (チップセット内蔵)
Microsoft(R) Office なし
(素晴らしいです)
299 x 229 x 23.3-27.6 (mm)
1.24kg (3セルバッテリ搭載時。重量は構成によって変動します)

販売価格 49,980円
割引額 10,000円
特別価格 39,980円 本体分配送料込み(3月2日現在)


そんなこんなでデルページを見ていたら、XPS M1330 というのも目に入った。あるいは目を疑った。このスペックでこの値段、89,980円?!う〜む、これにKubuntuを入れてガンガン使ってみたい。しかし、なんでVistaなんて入れてるんだ、これ?そのうち苦情ブイブイきて、XP版が出て、そのまた次にUbuntu版が出たりしたら最高なんですが。DELLのコンピュータにはろくでもないソフトがてんこ盛りに詰め込まれていないのがDELLの一番いいところだ。

DELL XPS M1330
インテル(R) Core(TM) 2 Duo プロセッサー T8100 (3MB L2キャッシュ、2.1GHz 800MHz FSB)
Windows Vista(R) Home Premium SP1 32ビット 正規版 (日本語版)(バカバカしいです)
4GB(2GBx2) DDR2-SDRAM デュアルチャネルメモリ(すごいじゃないですか)
13.3インチ TFT TrueLife(TM) WXGA 光沢液晶ディスプレイ(1280x800)(ちょっと大きめだけどいいか)
250GB SATA HDD (5400回転)(SSDなら尚良し)
DVD+/-RWドライブ(2層書き込み対応)
Core 2 Duo向け Dell Wireless(TM) 1505 内蔵ワイヤレスLAN Miniカード (802.11a/b/g/n対応)
NVIDIA(R) GeForce(R) 8400M GS 128MB DDR3
Microsoft(R) Office なし(素晴らしいです)
幅: 318 mm
奥行き: 238mm
高さ: 22.1-33.8mm
重量: 1.8kg(ちょっと重い)
販売価格 99,980円
割引額 10,000円
特別価格 89,980円 本体分配送料込み(3月2日現在)

dynabook SS RX2 T9HG がいいかなあと思っていたのだけど、値段が違い過ぎる。
インテル® Core™ 2 Duo プロセッサー 超低電圧*版 SU9300 動作周波数1.20GHz(いいなあ
Windows Vista® Business 32ビット版 with Service Pack 1 正規版(最悪
(Windows® XP ダウングレード用メディア付)(※1)
3GB(1GB+2GB)/3GB, PC2-5300(DDR2-667)対応 SDRAM、デュアルチャネル対応(なかなか
12.1型ワイド WXGA 半透過型TFTカラー液晶(省電力LEDバックライト)1,280×800ドット(好みのサイズ
128GB SSD(Serial ATA対応)(これがいい!
DVDスーパーマルチドライブ
Microsoft(R) Office :ワード・エクセル・パワーポイント(ど最悪・無意味)
IEEE802.11n ドラフト2.0、IEEE802.11a/b/g準拠
(Wi-Fi準拠、128bit WEP対応、WPA対応、WPA2対応、256bit AES対応)
約283.0(幅)×215.8(奥行)×19.5〜25.5(高さ)mm
重要:933g(最高
価格:オープンプライス
参考価格:269,700円(下がれー!VistaをUbuntu/Linuxにかえて、MSOfficeその他どうでもいいアプリを全部外して、20万円切りを敢行すれば旋風が起こると思う。どうですか?東芝さん。これじゃあ、Dellに流れるでしょ。僕は二回もdynabook買ったんですよ、そのへんを考慮してですね、なんとか)


Friday, February 27, 2009

Kubuntu(2)

いっちょインストールしてみるか?

まずOSを入れ替えるなんてことをする前に普通の人なら、そんなことして今までの仕事や遊びがそのまま続けられる環境になるのかどうかを確認しようと思うだろう。同じアプリケーションが使えなかったら、今仕事で使ってるファイルは単ならゴミになってしまうのか。あるいは、同じファイルにこだわらないとしても、インターネットをみたり、Eメールを送ったり、チャットをしたり、音楽を聞いたり、DVDを見たり、写真を編集したり、絵を描いたり、ウェブをデザインしたり、データベースを作ったり、ERPで作業したり、そういうことはできるのか。

結論から言うと、すべて問題ない、いやもっと環境はよくなると言える。が、もう少し具体的に知らないとOSどんでん返しの決心はなかなかつかないだろうと思う。僕もそうだった。

1。オフィス・ドキュメント
マイクロソフトのワード、エクセル、パワーポイントの三つは鉛筆と消しゴムとそろばんみたいに使われているから、この三つが使えないOSならほとんど普及の見込みはないだろう。これらがアップデートされるたびに、莫大なお金が全世界で動くわけだが、同じような機能をもったソフトは他にいくらでもあるし、その中でも無料でMsOfficeと同程度かもっと有能だと思われるソフトがOpenOfficeだ。マイクロソフトのオフィスドキ
ュメントとは互換性があるので、すぐに使ってまったく問題はない。これはWindowsでもMacでも動くので、OSをごっそり入れ替えるまでもなく、今からでも使い始めても損はしないと思う。僕はWindows上でもちょくちょく使っていた。また、コンピュータを買ったら、最初からStarSuiteというソフトが入っていることがあるが、あれはオープンオフィスと同じものだと思っていい。これが入っていたら、Msオフィスを買う必要はないので得をしたということだ。

OpenOfficeは http://www.openoffice.org/index.html へ行けば簡単にダウンロードできる。日本語版は、ここ。というわけで、とりあえずKubuntu(Linux)を入れたからといって、明日からすぐ仕事に困るということはない。


2。セキュリティ・ソフト
コンピュータを買ったら、とりあえずすぐにアンチウイルスやらファイアウォールやらなんやらかんやらがセットになったセキュリティ対策ソフトを入れることを勧められるだろうと思う。これもブランドものになると結構高いし、またすぐにアップデートに追加のお金を支払うはめになる。しかも、僕はこういうのを入れていた頃、重く感じてしょうがなかった。セキュリティ対策ソフトも無料で有能なものがたくさんあるので、Kubuntu(Linux)に乗り換えるまでもなく、次回アップデートの時期が来たら、そういう無料のセキュリティソフトに入れ替えるのもお勧めだ。


僕は、この前買った小さなネットブック(OSはWindows XP
)には、次の二つを入れている。
アンチウイルス用:avast!
ファイアウォール用:ZoneAlarm
どちらもとても快適に動いている。
家族が使っているコンピュータ(OSはWindows Vista)には
AVGを入れている。これも素晴らしく快適なソフトだと思う。

話をLinuxのセキュリティ対策に戻すと、どういうソフトを入れたらいいのかいろいろとサーチしてみると、結論はとりあえず何もいらない、ということだった。理由は僕には理解できる範囲を越えているのだが、こういう話であった。

 「 わたしの場合、Linuxでそうした上納金を納める必要がないことを説明する際は、ファイルパーミッション(アクセス権)というシステムについて説明することにしている。ウイルスやトロイの木馬とは何かという本質を外れた議論は不要であり、「これらのマルウェアは、あちらが必要とするファイルパーミッションをこちらから与えてやらない限り、悪さをすることはできません」と説明するのだ。


 Linuxにおけるファイルパーミッションとは、各ファイルに対する、読み取り、書き込み、実行という3つの権利を規定するもので、こう
した設定はシステム全体に適用される。またファイルパーミッションについては、root権限を有す特別なユーザー、サインイン中の各ユーザー、その他すべてのユーザー(world)という3種類のユーザーレベルも関与してくる。そして通常、システム全体に影響を与えるようなソフトウェアは、root権限がなければ実行することができないのである。」

なんだか分からないがそういうことで、セキュリティソフトに悩む必要は当面はないようなのだ。よく読んでみると絶対に大丈夫というわけではなさそうなのだが、絶対大丈夫なんてことはこの世に一つもないだろう。興味のある人はここを読んでみてくだい。

3。インターネット
インターネットに繋がらないとにっちもさっちもいかなくなる。それが一番心配であった。しかし、インターネットをいうものがどうやって繋がっているのかということはさっぱり分からない。ややこしい設定なんてやる必要があるともうお手上げだ。その時は、もう三年使ったという言い訳を盾にしてコンピュータをまるごと捨てる覚悟をしていた。

しかし、Kubuntuをインストールをして立ち上げ、Network Manager というものを探し当て、そこで何をしたのか忘れたが、要は指示にしたがって進んで行くと、あっさりと繋がった。ワイヤレスしか使ってないので、ケーブルを繋げた場合とか、電話線の場合とか、どうなるのか分からないがおそらく同じように簡単に繋がるのではないだろうか。どうやら、Kubuntuをインストールしても、ちゃんとややこしい設定は勝手にやってくれているようだ。少なくとも元々インターネットに繋がっていたコンピュータなら、また繋がるとは言えるのではないだろうか。それ以上のことは何も分からない。

4。ウェブ・ブラウザー

もちろん、インターネット・エクスプローラーの世界とはお別れだ。なんとすっきりすることか。今はFirefoxがこの世の第二の標準のようになってきたようだが、FirefoxにはLinux版があるので、ダウンロードすればKubuntuでもまったく問題はない。Ubuntuの場合はインストールするとFirefoxも同時にインストールされるようだ。僕は、Chromeのスピード感やシンプルさが好きで、登場以来ずっとChromeを使っていたのだが、これのLinux版はまだ出来ていない。ただし、今、鋭意開発中ということで、Linux上でChromeを検索すると、「出来たら連絡するからemail addressを教えてください」という案内が出てくる。そのうちできるだろう。

Kubuntuには、Konquelor,というブラウザーがついてくる。これがなんというか、進化し過ぎた哀愁を感じさせる、すごいソフトだと思う。単なる、ウェブ・ブラウザーでなく、File Managerでもあり、Document Viewerでもあって、ネットと自分のコンピュータの行き来を頻繁にしている人なら、こんなソフトがあればいいのになと思うようなものなのだが、いざそれを目の前にすると戸惑ってしまうとでもいうか。W3Cというウェブの標準を決める場があるのだが、そのテストにほぼ満点で合格する唯一のブラウザーらしい。ちなみにIEなどメジャーなブラウザーは50%くらいの出来だそうだ。

問題は、インターネットの場合、サイトの運営者側が想定するブラウザーじゃないとうまく見えなかったり、動かなかったりすることだ。
Konquelorでネットをぐるぐる回ってみたが、普通のサイトの場合はまったく問題はない。問題が出てくるのは銀行のサイトのように、独自にセキュリティの設定がしてあって、時には見ている側に小さなソフトをほり投げてくるようなサイトだ。こういうところは、IEとせいぜいFirefoxくらいしか想定していないのでKonquelorでうまく機能しなかったりする。しかし、だからと言って、Konquelorを使わないのはあまりに残念だし、ブラウザーの進化を見ていたいので、野暮な用事にはFirefoxで対応して、Konquelorは引き続き使っていこうと思う。そもそも何ができるのかまだ1%も分かっていないし。

5。Eメール
Kubuntuで使えるEメールソフトはたくさんある。Firefoxの兄弟版のThunderbirdにもLinux版があるので、Kubuntuを入れてこれを使っている人は多いだろうと思う。
KubuntuにはKmailというメールソフトが標準でついてくる。これがシンプルで、使いやすく、高機能なソフトだ。














Kontactという、いわゆるPIM(Personal Information Manager)ソフトも標
準でついてくるのだが、Kmailはその一部分でもある。逆の言い方をすれば、Kontactというソフトは、9つのコンポーネントから成り立っており(写真の左端に並んでいる)、それらのコンポーネントを一つずつ別々に立ち上げることもできる。アウトルック系に怨念を感じる人もきっと気に入るだろうと思う。

とりあえず、これで最低限のことは足りるだろうから、安心してKubuntuに乗り換えましょう。他のソフトについては別の機会に書くが、アプリケーションのことばかり書いていても、Kubuntuの話にならないので、次回はなんとかKubuntuそのものの話に戻ろうと思う。革命の道のりは長い。

今日のおさらい
■ワープロ・表計算など統合オフィス:OpenOfficeOpenOffice日本語版
■ブラウザー:Konquelor
, Firefox
■Eメール:Kmail,
Thunderbird
■情報管理(PIM):Kontact


Thursday, February 26, 2009

13日の金曜日

手術日は来月の13日の金曜日に決定した。なかなかいい感じではないか、と思いつつも、何故13日金曜日が不吉な日とされるのか知らないことに思い至り、ウィキペディアを見てみると、大して根拠がないことが分かる。しかも、13日の金曜日をもてはやしているのは、英語圏とドイツ、フランスくらいらしい。ちょっと期待はずれであった。

手術日は朝の7時15分に病院に行かないといけないらしい。そんな朝早くやってるのか気になったので、帰りに受付のおねえさんに一応訊いてみるとやってるという。当たり前か。手術にかかる時間は1時間30分と決めているようなのが、やや不安だ。切り刻んでる真っ最中でも時間がきたらさっさとやめかねない。麻酔は14時間くらい効くと言っていたが、昼前には退院しろという。そういう状態で歩けるのだろうかと思うが、入院期間が短いのは一般的なので、これくらいで一泊させてたまるかってとこなのだろう。手術代だけで費用は約40万円くらいだという。相場がまったく分からないので、ぼったくられているのかどうか分からないが、保険会社に連絡して直接払ってもらうことにした。

日本でもいくつかの生命保険とともに特約だとかなんとかいうのがついていたが、ひょっとしたら適応できるものがあるのかもしれない。が、いったいどんな保険に入っていたのか?その紙はどこにあるのか?こういうことを調べるのは想像を絶する困難を伴う、って状況はいかんなあ。

Tuesday, February 24, 2009

Kubuntu (1)

Kubuntu を入れた。一言だけの感想を言うとすれば、”素晴らしい!”。
3年前に買ったコンピュータに入れたのだが、まるで新品に戻ったような気がする。捨てなくて良かった。

問題がなかったわけではない。いろいろと手間取った部分もあったが、そのほとんどはシステム言語を英語にして、日本語入力が可能にするということに関わるもので、ただ単にKubuntu を入れるということに関しては実に簡単にできた。かつて、Windows 2000 を入れた時の七転八倒とは比べ物にならない。実際そんなことは比べられないのだろうが。

ちなみに僕はコンピュータのことはまったく知らない。コンピュータ言語については入り口も分からない。ただ単にいくつかのアプリケーション・ソフトのヘビーユーザーではあるだろう。それも、仕事のためであって、いわゆるエンタメ系については音の出し方も分からないというレベルだ。それでも、Kubuntu 導入のほとんどのことを二人がけソファに横になりながら、ほぼ片手でちょろちょろとPCを触りながらできたのだから、誰にでもできると思う。

あの鈍重だったPCが今とてもさくさくと動く。そして、Kubuntu にいっしょについてくるソフトの素晴らしさにまた感激する。すべてのソフトをまだ探求したわけではないが、このソフトの一群を見ているとなんというか、ドリームチームという感じがする。

これがすべて無料だというのに、世界中で有料のOSとアプリケーションソフトにお金を払い続けているのが、ますます奇異に思えてくる。世界の半分(一日2ドル以下で生活する側)にこういうコンピュータが行き渡れば実におもしろいことになるではないか。ただ単に情報格差に対処するだけでない。有料世界の”世界標準”に対しても脅威となる。

Kubuntu、あるいはその母体であるUbuntu、もしくはそのもっと元になっているLinuxには自由で誰にでも開かれた巨大なコミュニティがネット上に存在している。まったくのド初心者である僕にも開かれている。Kubuntuのインストールの過程で、いろいろな疑問に直面するのだが、誰も聞く人がいないから、結局あちらこちら検索したおして、解答を見つけながら進むということになる。どんな問題であろうと、必ず他にも同じような問題に遭遇している人がいるものだ。そういうド初心者の質問に対して、もっと分かった人がいろいろとアドバイスをしている。それを見ながら、特に僕にとって最大の問題であった日本語入力の問題なんかに対処することができた。

検索したおしている時に気がついたのだが、個人のブログでいろいろとKubuntu やUbuntu、あるいはLinuxについて書いている人がたくさんいて、それも非常に役立った。こういう人たちはかなりの専門家であるようで、読んでも分からないことが多かったが、中にはとても役に立ったケースもあった。例えば、以下のようなブログ。「私のTech記憶」や「ennui」は役に立つだけでなく、かっこいい。

私のTech記憶
Viva! Ubuntu (Old)
Viva! Ubuntu!!
Pebbles in the Sand
Hatena::Diary::Ubuntu
RM Jones' Adventure
ennui
I am a cat. 我輩は猫である。
kanzメモ
Suttoko Dokkoi
いくやの斬鉄日記

というわけで、僕も、何か還元しようと思うのだが、専門的なことは分からないから、今から有料独裁電脳体制から抜け出そうと思っているが僕と同じくらいド初心者の人が参考に出きるように、Kubuntu の導入から何が起こるかをボチボチ記録にしておこうと思う。

まず、入り口から。
Ubuntu :Ubuntuのホーム。ここから、いろいろな派生OSへも行ける。
Ubuntu Japanese Team :Ubuntuの日本語化を行っているホーム。ここからは派生OSへはとべない。
Kubuntu :これがKubuntuのホーム。ここから僕はKubuntuをダウンロードした。最新版は、KDE4.2だが、ダウンロードできるのは、KDE4.1で、4.2へは自力でアップグレードしないといけない。これが最初の難関になったが、なんとかなるものだ。ここからは次回にしよう。




←Kubuntuの見栄え。

Sunday, February 22, 2009

エタノールとKubuntuと革命

日本にきこく中、NHKの「沸騰都市」というシリーズものの第6回「サンパウロ 富豪は空を飛ぶ−」というのを見たのだけど、これはおもしろかった。製作者の意図とはかなり違うかもしれないところで、高揚感みたいなものが沸いてくる。

ブラジルでは25年くらい前からサトウキビ畑を大量に増やしているそうだ。サトウキビジュースを大量に飲むようになったからではなく、サトウキビから作るエタノールを大量に作ることを国策として推進してきたからだそうだ。その頃に、国家全体の産業政策として化石燃料の代替燃料としてエタノールにターゲットを絞ったというのはすごいと思う。その当時、エタノールや水素エンジンについて議論されていたのは覚えているが、そこまで大胆な決断をできる人や企業や国家はとても少なかったのではないだろうか。

現在ブラジルの車はすべてエタノール車かエタノール混合燃料車なのだそうだ。ブラジルはホントにエタノール大国になったのだ。ブラジル以外でエタノールを大量に生産している国はまだアメリカしかない。アメリカではいわゆる石油関連の利益団体が強い影響力をもっているので、代替燃料策に真剣に取り組もうとしても、エタノール推進は難しかったのかもしれない。しかし、オバマ政権下ではこれも変わってくるかもしれない。

今、全世界を覆う経済危機に対してもブラジルの大統領は、我々は乗り切ることができる、ととても自信に満ちた演説をしていた。ここまでグローバルな依存関係が進んでいる以上、この不況は一国単位でなんとかできるというものではないだろう。しかし、ブラジルの大統領の対岸の火事を眺めるような態度は象徴的であった。

今、ブラジルにはエタノール生産のノウハウを求めて、アフリカの国からたくさんの訪問者がやってくるそうだ。アフリカには土地はたくさんあり、サトウキビを大量に栽培することも可能なのだろう。彼らも大きな収入をもたらす産業を作りたいという熱望を持っている。石油がなくても、先進技術がなくても、サトウキビでエタノールができるなら、輸出できるくらい作れると思うではないか。そんなアフリカ各国の政府からやってくる人たちを迎えるブラジル側のコメントがブラジルという国の熱意の源を示しているような気がした。だいたいこんなことを言っていたと思う。

「石油は世界に争いをもたらしてきた。エタノールは違う。エタノールは平和だ。石油の時代は中東とアメリカが世界の権力を握っていた。しかし、石油はなくなる。アフリカにサトウキビを植えてエタノールを生産し始めれば、世界の権力構造は変わる。これからはアフリカとブラジルが世界を動かすのだ。」

これは革命だ、と実際に言ったかどうかは覚えていないのだが、自分の記憶の中では「これは革命だ」というセンテンスが残っている。上の方で書いたように、ブラジルの大統領が、対岸の火事的態度をとれたのは、今彼らが描く世界の未来像が強固にあったからではないだろうか。石油からエタノールへの交代、それに伴う世界の権力構造の交代、なんてことを実現しつつある渦中にあるなんて思えたら、自信がつくどころではない。舞い上がってしまってもおかしくないではないか。

第三者としてテレビに流れる映像を呆然と眺めているに過ぎないので、いろいろと「そうは言っても」的なネガティブな可能性のことも頭の片隅に浮かびつづけるのだが、それにしても、かなり遠い先の未来までを含む、一つのヴィジョンをもって、国家の政策を作り、それに従ってそれを着々と実施していく、そんな国家の姿を見ていると、幸せに近い気分になってくる。是非ともアフリカの国々でもサトウキビ・エタノール作戦を実施して成功して欲しいものだと思う。

アラブの石油産出国がこのような事態をボーッと眺めているだろうか、と途中で思ったのだが、やはり彼らも近未来の自分達の姿を見ているのだろう。今、ブラジルのサトウキビ・エタノール産業に積極的な投資をし始めているのは、なんとアラブの石油産出国なのだと言う。石油からエタノールは権力を奪おうとしているのに、なぜ、彼らは自分で自分の首を絞めるようなことをするのだろうか。

石油はいつかはなくなるだろう、しかし、彼らの考えは、エタノール混合という使い方をすることによって、石油の寿命を伸ばすということらしいのだ。実際、番組の中でも出ていたが、従来のガソリンとエタノールを混合して走る車がブラジルでも主流のようなのだ。とりあえず、石油の寿命を伸ばす、そしてその間に何かしなくてはならないってとこだろうか。エタノールへの投資という権力延命策っていうのはなかなかおもしろい。どこの国もどうやって生きていくか必死なのだ、と思った。日本は・・・と書き出すと陰々滅々となるので止めよう。なんせ世界は革命中なんですから。

(それにしても「富豪は空を飛ぶ」っていうタイトルはいかがなもんか。ちょっとポイントが違うような気がするが、僕が違うポイントにフォーカスし過ぎていたとも言える。)

* * *

ちゃんと椅子に座って机の上にコンピュータを置いてタイプするという姿勢が取れないことは前に書いたような気がするが、日本にいる間にやけに安いネットブックとやらを一つ買ってそれを膝の上において(まさにラップトップ)ちょろちょろとコンピュータをさわっていた。と言っても、長い文章をこの姿勢で書きつづけるのは不可能で、ネットを徘徊する程度でも結構くたびれる。

たいていの携帯電話より安いと思うのだが、このネットブックは思っていたよりはるかに使える。StarSuiteが無料で入っていたし(MS Officeみたいなもの)、セキュリティ対策は、フリーソフトのAvastとZoneAlarm Firewallをダウンロードして入れたので、追加費用はまったくかかっていないのだけど、なにもかも十分だ。なんなんだ今までの高いコンピュータはと思ってしまう。せいぜいマイクロソフトのワード、エクセル、パワーポイントを使う程度の仕事を前提に考えるなら、今お店で売ってるコンピュータならどれを買っても十分過ぎる以上の性能を持ってるから、そもそもコンピュータの品定めをする意味もほとんどない。酒なら何を飲んでも酔っ払うのだから、どれを飲んでもいっしょだという境地に似てきた。

というわけで、一番よく使ってるラップトップがもう古いし(だから、どうなんだ?)、動きが重くなりすぎて(HDを掃除しろ)、ともかく買い換えようと思っていたのだが、それを思い直して、時間のあるうちにOSをWindows以外のものに、ごっそり入れ替えてみることにした。以前から、というよりも10年ほど前から、ずっと考えていて一度も実行しなかったことにようやく手をつけることになった。

コンピュータを使い始めたのは20年ほど前だが、最初の10年間はずっとMacを使っていた。10年前に職場でWindows、家でMacという二重生活に疲れ果てて、とうとう家でもWindows を使うという生活に堕ちてしまった。その頃、第三のOSを試してみようと考えはじめ、当時はBeOSというものを入れようと考えていた。Windowsや、 Macよりはるかに優れていると聞いたものだが、今、あれは実質的に商業的には屠殺されてしまったらしい。惜しいことをしたものだ。(http://en.wikipedia.org/wiki/BeOSに無残な歴史が載っている)。

去年、Ubuntu というLinux をベースにしたOSがあることを知って、一度試してみたいと思っていた。ネットをいろいろ見てみると、なんとUbuntuには派生OSがいろいろあるではないか。Kubuntu、 Edubuntu、 Xubuntuなどなど。ちょろちょろっと説明を読んだり、見栄えを比べたりして、Kubuntuを入れることにした。

ところで、Ubuntuって変な、ききれない音だが、元はズールー語で意味は 'Humanity to others'、もしくは 'I am what I am because of who we all are'ということだ。これはかなり美しいではないか。これがUbuntuの基本哲学なのだそうだ。フリーでオープンなコミュニティによって維持され発展しいくOSだと。

これを支えているのはCanonical Ltd.,という南アフリカの会社なのだが、Ubuntu自体は無償で配布され続けている。Canonical Ltd.の経営者、Mark Shuttlewortもかなり変わった経歴を持つ、興味深い人物だ。1973年9月に生まれということだから、まだ35歳だ。彼は95年にdigital certificates と Internet security を専門にするThawteという会社を設立し、99年にその会社をVeriSignに売った。インターネットでお買い物をしたことがある人なら、VeriSignのロゴをたいてい何度か見かけたことがあるだろうと思う。VeriSignが、digital certificatesのほとんど標準になっているような気がする。この時に、彼は5億7500万ドル儲けたそうだ。当時のレートでたぶん600億円くらいだろう。そして、2000年にCanonical Ltd.を設立した。それから、社会改革に献身するNGOを作ったりするのだが、2002年にはなんと宇宙旅行までしている。ロシアのソユーズに乗って国際宇宙ステーションまで行ってそこで8日間滞在し、エイズとゲノムに関する実験をしてきたそうだ。旅費は20億円くらいらしい。ただお金を払ったら行けるってわけでもなく、ちゃんと1年間のトレーニングがあったそうだ。

話が逸れてしまったが、BeOSのパーソナル版や、Linuxのように無償で使えるOSが僕のような普通のユーザーにちゃんと使えるものなら、世の中には無料のアプリケーションソフトは腐るほどあるわけだから、コンピュータという機材、モノの部分以外はすべて無料でいいではないか、どうしてわざわざMicrosoftや、Macに高いお金を我々は払い続けているのか、そして世界一のお金持ちを作ることに貢献しているのか、という疑問を持っているのは僕だけじゃないだろうと思う。

僕の仕事しているような国際機関や各国政府の官庁や企業など世界中のほとんどといっていい組織がほぼ一社にOSとアプリケーションソフトのライセンス料を払い続けているというのは異常だと思う。無料の代替物、しかももっと優れいているかもしれないものが存在するというのに。これは役所なら公的な調達の精神からすると本来おかしいはずだ。法技術的にはなんとでもすりぬけられるのは分かっているが、ほっといていいのだろうか。シーザーならほっとかなかったと思う。

富の偏在は情報の偏在に直結しているけれど、それがコンピュータ+インターネットの普及によってものすごい勢いで加速されてきた様子はちょっと恐ろしい感じもする。貧富の格差が社会の不安定要因である、というのが援助の議論によく使われるが、富める国と貧しい国の間での情報量の格差、一国内での情報格差など、情報の圧倒的な偏在が国家間や一国内の不安定要因になっていることは確実だろうと思う。何も根拠にするデータがあるわけではないが、先進国と貧困国の間を頻繁に往復する生活を15年以上続けていると、直感に過ぎないとしても、かなり頑固なものになる。

今の世の中にはとりあえず今日食べるものがあるかどうか分からない人が何億人もいる。世界の人口の約半分(30億人以上)は一日2ドル以下で生活しているそうだ。一年間の生活費が約7万円の人が世界の人口の半分!そして、その一方で金持ち国には一回のボーナスに10億円とか20億円とかもらう人もいるのだから、そりゃ不穏になってもしょうがないと思うのだが。

だからといって、ちょっとやそっとの”援助”で事態が改善されるとはとても思えない。貧困国に自前で富を蓄える力が備わらない限り、根本的には何も変わらないだろう。そのためにはこれ以上情報格差が広がらないように、貧困国の次の世代が知恵をつかって勝負ができるような環境ができないと何も始まらない。道具の一つに過ぎないがコンピュータ及びインターネット環境というのは、貧困国の次の世代が自分の国を貧困のぬかるみからを救いだしていくための最低限の条件ではないだろうか。フリーのOSとかソフトというのは、長〜〜〜い目で見れば、国連よりもはるかに国際社会の平和と安全に貢献するのではないだろうか。

エタノールとKubuntuで革命かあ、いいですねえ。

UNIQLOCK

この時計みたいな、ダンスみたいな、音楽みたいなもの(→)クリックしたら大きくなります。
”MUSIC×DANCE×CLOCKという言語を越えたコミュニケーションを目指す”だと。
飽きずにずっと見てしまった。自分のブログをたまには見てみるという動機付けには良いかも。
明日は最後の手術前検診。

Thursday, February 12, 2009

くしょー

苦笑1.

Top Ten Reasons You Know You're Working at an Aid Organization
 - According to David Letterman (The Late Show on CBS in the USA)
 
 1. You just had a pre-meeting to discuss your strategy planning session for the new initiative to reduce poverty by increasing access to safe water/credit/food/health care through fair and equitable distribution to those with the right to said good or service through engagement with duty bearers in the government and other stakeholders and civil society organizations.

 2. You just repeatedly slammed your head into your keyboard after spending the last 20 minutes trying to get your conference call between Port au Prince, West Bank/Gaza, Delhi, Nairobi and New York to work only to fail miserably.

 3. You realize that you can no longer squeeze into your cubicle past that cool hand-woven cloth from Mali, the wooden mask from Congo, the elephant figurine from Thailand and the rug from Afghanistan.
 
 4. You just completed an annual report to your donor explaining that you're very sorry that you only managed to accomplish 2 of your 14 objectives due to sudden onset of war, drought or an invasion of futuristic nano-robots.
 
 5. You just finished explaining to the donor that you are likely to need a two-year extension and an extra $200,000 to hire an independent consulting company to come up with a plan to fight off the nano-robots, carry out said plan and then finish up the original activities.
 
 6. You realize that you just used cheers, karibu, Insh'Allah or namaste in casual conversation despite the fact that you are neither English, Kenyan, Arab or Indian.

 7. You realize that your favorite and most frequented cafe is located in Schiphol Airport in Amsterdam.

 8. You just finished depressing a volunteer caller from the Red Cross for the 12th time this year who reluctantly agreed that you are not eligible to donate blood because you just got back from .
 
 9. You're pumped with antibiotics more frequently than a cow in a concentrated feeding operation.

 10. You tell yourself it's not failure if you turn it into a lessons-learned document.

苦笑2.