Saturday, February 10, 2007

2回目の初心者

先週末NSさんが帰ってきたので、今日は(2/10)お昼に寺子屋を再開した。今日のお題はHuman Security 。まず、この概念ができるまでの歴史的背景の話から始めた。日本語の世界で「人間の安全保障」というと、スローガンの連呼のような話ばかりで、実質はどこへ行ってしまったのだろう?と思うことがしばしばある。まるで human security という概念が文脈から引き剥がされて、中味のない器だけがどんどん畸形化していったようでかなりきしょい。そういうわけで、ちょっと遠回りだけど、NSさんをまるごと文脈の中に入れようと思った。

具体的な歴史的背景の話のあとに、いったんHuman Security という概念が独立してからの理論的洗練の過程の話をした。State Security, Human Rights, Human Development などの概念がくんずほぐれつしていく話になるのだが、やはりこれは最初に文脈が見えてないと理解しにくい。彼女の質問は「なぜ・・・なの?」という形のものが多かったので、個々の単語が意味のある繋がりを形成し始めたのだろうと思う。散乱するキャッチフレーズを覚えるだけなら勉強なんかするより、鼻くそをほじくりながらパチンコでもしていた方が充実した人生を送れるだろう。

理論上の現段階の到達点の話はかなり寒いのだが、しみじみとした蓄積も英語圏では続いているので、これは将来もう一度詳しくしようと思った。

最後にHuman Security という概念を現実になんらかの活動として適用する話をした。今のところその入り口にあるのがThe Protection-Empowerment Framework なので、これの話を自分がかつて書いたボスニア・ヘルツェゴビナの調査報告書を元にして説明した。このFramework から具体的な個々の活動を導く過程に必要なツールがまだできあがっていないというのが実態なのだけど、その試みの一つとして自分が考えたことが報告書には書いてある。それと同時にhuman security という概念を明示的に使ってない、現行の様々な活動の中に実態としてhuman security とオーバーラップする考慮がすでに入っている話もした。

制度化するhuman security をめぐる惨憺たるゴシップなども交えて、だいたいそんな話をして終わった。NSさんはこれからプロジェクト形成をしていく人なので、なるべく早く思考の枠組みを手にした方がよいと思って、最初のうちは細かいテクニックの伝授のようなものはやらず、この世界のいろいろな把握の仕方みたいな観点でトピックを選んでいる。1回目はConflict からAssistance にいたるプロセスの話、2回目は援助の様々なターゲット別のNormative Framework とOperational Framework の話。難民とIDP援助に関しては、当然、51 Convention、67 Protocol、OAU Convention, Guiding Principles on IDPなどの基礎的な知識について、非戦闘員援助に関しては、国際人道法が定義するところの人道支援について、つまり4つのジュネーヴ条約の知識について話した。国際人道法上の占領軍の責務と援助団体の関係の話も含めた。3回目は平和構築という概念が形成される歴史と、現段階での実施上の傾向と対策のような話にした。

寺子屋の後、NSさんが日本から持って帰ってきた上善水如をイカの塩辛と松前漬けをあてにして飲むことにした。とてもおいしいので、5時くらいに飲み始めて5時半くらいに全部飲み終わってしまった。二人ともちょっと飲み足りないので、それから、ウォッカを飲むことにした。ブラディ・マリーを大量に飲み始めて、NSさんも僕もかなり酔っ払ってきて、わーわー話が続いていた。

そこにレーコが10時くらいに合流することになった。別のところでディナーをしていたのでその帰りに僕の家に寄ったのだった。5時間飲み続けていた僕と NSさんはもうデロデロになっていたが、レーコはさっと入ってきて、あたかもずっとそこにいたかのように溶け込んだ。11時頃、NSさんはよろめきながらも、ちゃんと自分の二本足で立ち上がって帰っていった。

そして、レーコと二人になっても、当然僕はまた一昨日のように飲み続けていた。今回はレーコもウォッカを飲んでいる。なんかとてもおもしろかったという感覚は残っているし、笑い転げてお腹の筋肉が引きつる思いをした瞬間なんかも覚えているのだが、また何を話していたのかまったく覚えてない。何時まで飲んでいたかも分からない。

ふと目が覚めたら午前6時くらいだった。また酔っ払ったままだった。二日酔いはまだずっと先のようだ。フラフラになりながらトイレに行ったら、猛烈に吐き気が襲ってきて、吐こうとするのだがなかなか出てこない。ロキソニンを飲んでまた寝た。

次に目が覚めたら8時半だった。9時半からミーティングがあるので、なんとかシャワーを浴びてオフィスに行ったが、ヨレヨレで頭が働かない。オフィスの自分の部屋で呆然としていると、リサが入ってきてYou look terrible ! と一言いって去って行った。

今日(2/11)はレーコを歓迎するランチをクロアチアン・レストランでやったのだが、そこでレーコに昨日は午前2時まで飲んでいたという事実を教えられた。つまり昨日の午後5時から数えると、9時間も延々と飲んでいて、それが終わったのが今から10時間前なのだから、全身にアルコールが隈なく滲みこんでいて当然なのだった。

お酒を飲み始めたばかりのティーンエイジャーじゃないんだから、もう少しコントロールできないのかと思うけど、爆飲の20代30代が終わって、ほんのつきあい程度のお酒しか飲まないようになっていた。それがかなり長い期間続いて、また最近ひどい飲み方をするようになってきたので、2回目の初心者のようなものなのかもしれない。そう思えば、人生を二回して得したような気もする。

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