Saturday, August 09, 2008

変な泳ぎ方

デンマーク語で解説するオリンピックの番組を見ていたら、どうもデンマーク語と中国語の音が似ているような気がしてきた。どちらも日本語にはあり得ない難しい音が入っている。激しく上がったり下がったりする点も似ている。両方分かる人に一度きいてみたいものだ。

小学生の頃、かなり真剣に泳いでいたので、今でも水泳競技が出てくると陸上競技なんかよりやや真剣に見てしまう。毎日25mのプールで2000m泳いでいた。学校代表になって校外の大会に行くと、当然50mプールなのだが、周りの人がよく言うような雰囲気に呑まれるとか、実際はそれ以前の話だった。もう、水が違うとしかいいようのない感覚を味わう。確かに自分の泳ぎが立てる波、それが戻ってくる波、何もかもが微妙に違うのだと思う。広さも深さも違うのだから、当然なのだが、測りようのないほど微々たる違いなのだろう。重油の中で泳いでいるような重たさ、溺れるような恐怖を感じたのをよく覚えている。まさか競泳に出て溺れた人は史上一人もいないだろうから、あの時溺れていたらもっともバカげた溺死として記録に残ったかもしれない。

マイケル・フェルプスはメダル8個の期待がかかっているそうだが、水中カメラが映す彼の泳ぎを見ていたら、意外なことに彼のクロールはどちらかというとクセのある泳ぎ方であることに気がつく。しかも、右と左のストロークに微妙にずれがある。どちらか一方で息継ぎをすると当然、左右のストロークを微妙にかえて調整してしまうのだが、トップスイマーはみんなきれいに、息継ぎなんかしていないかのように左右均衡のとれた泳ぎ方をしているものだ。

彼が日本の選手なら、きっと矯正されていただろうと思う。しかし、アメリカでは、そんなことしないのだろう。彼は彼の泳ぎ方にどんどん磨きをかけて世界記録を更新してきたのだろうと思う。

気になるのでネットで検索してみたら、NHKスペシャルで彼の泳ぎが取り上げられたことを知った。内容は分からないが「泡のでないストローク」という言葉があったので、きっと彼独特のかき方が分析されたのだろうと思う。

1972年のミュンヘン・オリンピックで7種目すべてに世界記録を出して、7個の金メダルをとってかえったマーク・スピッツには驚愕したが、彼のクロールも当時としてはとても個性的に見えたのを覚えている。実際は世界一速いにも関わらず、ものすごくゆっくり泳いでいるように見えたのだ。6ビートのバタ足が当然だった時代に彼は2ビートで泳いでいた。足の動きを見ていると、のんきに水中散歩でもしているように見える。その後、2ビートは珍しくもなんともなくなった。

日本では千葉すずのような選手が潰される。ちょっとした子どもの言葉に目くじらを立てるメディアに日本が滲み出ていた。日本のオリンピックの代表選考は日本そのものだ。スポーツとはまったく相容れない基準が根深く巣食っているとしか思えない。それぞれの競技で最高を目指している選手達には酷い話だと思う。

アメリカの代表選考がどうなっているのか知らないが、ニュースで知る限り、当然選ばれると思われていたスター選手が選考会で不振でぽろっと落選したりする。そこに、まったく無名で未知の可能性が入り込む余地が生まれる。過去の実績を考慮していると新旧の交代はうまく進まないだろう。

オリンピックを見ていておもしろいのは、変な泳ぎ方、変な走り方、変ないろいろが見れることだと思う。それでも、彼らは世界のトップクラスになったのだから、世界標準になったすべてのやり方以外に、まだまだいろんな可能性があるということを証明している。

マーク・スピッツと同じミュンヘン・オリンピックの平泳ぎ100mで金メダルをとった田口や、1988年のソウル・オリンピックの背泳ぎ100mで金メダルをとった鈴木大地もかなりオリジナルな泳ぎ方をしていたと思う。日本にも可能性がないはずがないと思うのだが。

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