Friday, December 17, 2004

Ugly

今日は金曜日なので、オフィスは休み。でも休まない人も多い。いまだにemergency mentality を引きずっている。システム事態がemergency modeから脱しきれてない点も多々ある。そして相変わらず恐ろしく効率が悪い。
僕は今日は完全に休むことにした。どうせ、引きずっている仕事があるわけでもない。ドキュメントを読んで早く現状に追いつかないと。

昨日は、カブールからジャララバードの方へ向かう道沿いに作られた、ちょっと郊外にあるUNAMAのオフィスにIDカードを作りに行った。驚いた。巨大な敷地に整然と新築の黄土色の建物が並んでいる。何十にも張り巡らされた厳重なセキュリティ設備。数百台はあるだろう、UNナンバーのランドクルーザーやトラックが整然と並ぶ。なんなんだ、これは?僕には軍の基地にしか見えなかった。国連はアフガン人の社会からは完全に隔離されている。

国連ボランティアのゲストハウスが敷地内につくられ、これも整然と並んでいる。ずらっとならぶ各部屋に取り付けられたエアコンがビルのデザインのように見える。こんなところに住んでいたら発狂しないだろうかと思った。何より、これではアフガニスタンもアフガン人も何も分からないではないか。

広大な敷地の中でIDカードを作っているセクションの場所がどこにあるか、誰にきいても誰も知らない。きっとこの敷地内には世界中から来た外国人とアフガン人を合わせて数千人の人たちが働いているのだろう。お互いに誰が何をしているかなんて分かるわけがない。国連といえば外国人もアフガン人もみんなが顔見知りであった時代はとっくの昔になくなっていた。

UNAMAからカブール市内のオフィスに戻る時に、ふとカバブが食べたいとドライバーに言ってみた。現在のセキュリティの指示によると、public place/bazaar には行っていけないことになっている。しかし、いったいどこがpublic space/bazaar で、どこがそうでないのだろう。カバブ屋が並んでいる通りを僕はよく知っている。例えば、あそこはどうなのだろう、と思っていたのだ。ドライバーはそういうことを知っているのだろうか。

ドライバーは、あっさりとシャリ・ナウに行こうと言った。僕もそのあたりを考えていたのだ。かつて住んでいたUNのゲストハウスも、かつて働いてたオフィスもそこにある。カバブよりも、そこに行くまでの街の風景を見たかった。

これがあのカブールか。
カブールは醜い姿に変わり果てていた。いたるところに建てられた大使館や国際機関のビルはすべてがほとんど砦と化している。4,5メートルの高さの外壁に、一辺1メートルほどの立方体の土嚢が四段に積み上げられ、一分のすきもなく敷地を取り囲む。そんな城壁に沿って所々に作られた監視塔には武装兵が外を睨んでいる。最初はそれらが全部、軍の基地なのかと思ったのだが、そうではなかった。

外交使節や国際機関の建物の城砦化は、外国人とアフガン人の間に築き上げられた壁を象徴している。完璧な失敗の象徴。リスクをババ抜きのように次々にシフトし続けるだけで事を済まそうとする国際社会の無能ぶりの象徴。リスク・マネジメントの理論は言う。軍が城砦化する、そうすればリスクはcivilianにシフトされる。もちろん何も解決されていない(リスクは消滅していない)。civilianの中では、金持ちの外交使節や国連が城砦化する。そうすれば、リスクはもっと貧乏なcivilianにシフトされる。もちろん何も解決されていない(リスクは消滅していない)。カブールがこうなるのも不思議ではないのだろう。世界規模でリスクのたらい回しが進んでいるのだ。そして何も解決しない。

静謐と澄んだ空気の街は、白痴のように鳴り響くクラクションとひどい空気汚染の街に変貌をとげている。鼻の穴の中が真っ黒になった。やっと道端のカバブ屋にたどりついた。2年ぶりくらいではないだろうか。しかし、そのカバブは、堅く、ひどい臭いがこびりついていた。元々カブールのカバブはまずい。カバブは少し郊外に出ないとおいしいものが手に入らないのだ。それでも、こんなまずいカバブは食べたことがない。客をバカにしているのか。こんな気分は東京の飲食店以外では感じたことがない。一きれ食べて捨てた。

これがアフガン人が欲しかった”国家”なのだろうか。彼らが切望し、待ち望んでいた”平和”なのだろうか。まだ判断するのは早い。もっと見てから考えよう、もっと他に何かあるかもしれない、そう自分に言い聞かせてオフィスに帰った。

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