Monday, December 19, 2005

プルン

ホテルの部屋のテレビにNHKが入ってたので、つけてみると、ものすごーく懐かしいスタイルの語り口の司会者がパッとしないステージの上で素人っぽい人になんかしゃべっている。どうやら、この素人っぽい人が歌をうたうようなのだけど、すべての雰囲気が例えば「戦後」とか「復興」みたいな言葉を連想させて、どうも今ではないように見える。

これはドラムの一場面なのだろうかとしばらく見ていたが、どうもそうではないらしい。古い録画を放映しているのだろうかとも思ったがそうでもなさそうだ。やがて「のど自慢」という文字が目に入った。のど自慢?ものごころついた頃にはすでにやっていたと思うが、あののど自慢?あれからずーっとやっていたのか?どこかまったく知らない町の公民館のようなところでやっているらしい。ずーっと同じことを五十年くらいやっていたのだろうか。時間のひずみに落ちてしまったような気分だ。

それが終わると、書評みたいなものが始まった。今日はミステリーものを紹介する日だそうだ。二人の文芸評論家という人が出てきて、この二人が野球の打順に合わせて(?)、9冊の本を選ぶという趣向だ。なぜ野球の打順なのか、それがミステリーとどう関係あるのかはまったく分からない。クリーンアップを打つ三冊の本について二人の文芸評論家がしきりに議論している。日本は本格的にどうかしちゃったのだろうか?のど自慢の後に、本の打順?頭おかしくなりそうだ。

ちなみにこんな本(↓)が出てきた。本には罪はないだろう。まったく知らない分野だけど、何冊か読んでみようと思った。この番組の効果ありか。

「暗礁」黒川 博行
「隠蔽捜査」今野 敏
「シャングリ・ラ」池上 永一
「容疑者Xの献身」東野 圭吾
「オルタード・カーボン」リチャード モーガン
「暗く聖なる夜」マイクル コナリー
「耽溺者(ジャンキー) 」グレッグ ルッカ
「魔力の女」グレッグ アイルズ
「灰色の北壁」真保 裕一
「ユージニア」恩田 陸

テレビの有料放送で"XXX2 - The Next Stage "を見た。こういうのを見て、戦場に行く若者はやはりムチャクチャしてしまうしかないんじゃないだろうか。残念ながら、そういう若者が登場するルポ、 "Generation Kill" は翻訳されないようだけど、あれを読んでからこういう映画を見てもコンピュータゲームで育つ狂気よりも哀しみの方をどうも先に見てしまう。

主人公のIce Cubeのセリフに"I was born looking guilty." ってのがあったけど、うまい表現だな。僕も実は、I was born looking #$%& って思うことが多々ある。

"Batman Begins" の中で、"What I do defines me" というセリフが出てくるんだけど、これは『蒼き狼』(井上靖)で描かれてるジンギス・カンの生き方に現れている思想と同じだ。

「ほんとの私は?」という問いは、人生で最も言い訳がましい時期である思春期に誰もが通過するものだと思うけど、僕は『蒼き狼』を読んで、この問いが果てしなく無効であることに納得したもんだ。だから、バットマンがWhat I do defines me と言ってるのを見た時も、Ice Cube が屁みたいな顔をしてI was born looking guilty と言っているのを見た時も、みんな苦労して大人になったんだなあと頭の中でものすごい大飛躍が働いて思った。これを読んでいる人はなんのことかさっぱり分からない可能性大ですね。

まだ咳が続く。時々、ゲポッとのどの奥からカタマリが出てくる。太った芋虫のような形だ。やわらかく弾力があるが、形は崩れない程度に固体化している。おすとプルンとゆれる。まるで一個の生物みたいだ。黄色い地に赤がまだらに入っている。痰に血が混じっているのだ。これを食べると病気になるだろうなと思うが、元々自分の体内から出てきたことを思い出して一人笑ってしまう。しばらく眺めてからティッシュでくるんで、もう一度念のためギュッと押してみたが、かなり固形的抵抗を示した。なかなかやるなと思いながら、ゴミ箱に捨てた。そろそろ頭のもやが晴れてきそうだ。

No comments: