Saturday, February 28, 2009

するする育つ

春に新学期が始まる、日本式の数え方なら、長男は今小学校の3年生で、4月から4年生になるはずなのだが、日本語がいまいち頼りないので土曜日の日本語補習校では今2年生に在籍している。平日に行っているインターナショナル・スクールでは普通どおりの学年で、かつ秋に新学期が始まるので、こっちは4年生に在籍している。つまり、一人で2年生と4年生である、という妙なことになっている。

1年下の学年に入っているにもかかわらず、ひらがながちゃんと読めない、漢字を覚えてこない、このままでは進級させられないと、日本語補習校の先生には何度も脅されていた。小学校に進級とか落第とかそんなものあるのかと思ったが、宿題はめったにしているようすはないし、復習も予習もそんな概念さえまだ持ち合わせていないので、先生の脅しにあえて抵抗する気にもならなかった。狭い世間にきいてみると、親がちゃんと子供の勉強をみないとそういうことになって当然だという意見が多く、それに安心もしていた。

先週の土曜日は学年最後の学力テストだというので、家でゴロゴロしている時間を有効に使おうと試みて、時々国語の教科書を引っ張り出してきて、長男に読ませていたりした。しかし、テストならそれなりの対策をしないといけないだろうと思ったが、まずテスト範囲というものが分からない。仕方ないので、前日になって同級生のお母さんに電話をしてきいたが、話に出てくる学校で配られたプリントというのがどれだか分からず、結局うやむやにしたまま話は終わった。

昔と違って、日本語補習校もインターナショナル・スクールも学校からはEメールで連絡をどんどん送ってくるので、日本語の先生のメールを遡って読んでみてだいたいのことは分かった。で、テスト勉強らしきことを長男としたのだが、おもしろいことに気がついた。「音」とか「ようす」をあらわす言葉というのが教科書に出てくるのだが、長男はこれがほとんど分からないのだ。犬は日本語ならワンワンと鳴くが、英語ならばバウワウと鳴く、というやつだ。すべての動物が日本語でどうなくかなんて僕も分からないが、生活圏にいる動物の鳴き声くらいなら分かると思う。そうやって日本語で鳴いているのだから。

「ようす」を表す言葉というのはさらに悲惨なことになる。「もりもり」が食べるようすを表す言葉だなんて、日本語でもかなり上級ではないだろうか。日本人にはバカバカしいほど簡単な問題、例えば、次の二つのグループをちゃんと繋げるというような問題は非常に手強いことになる。

1、サルが木に登る
2、赤ちゃんが育つ
3、葉が落ちる

ア、すくすく
イ、はらはら
ウ、するする

長男の世界では、サルがはらはらと木に上り、赤ちゃんがするする育ち、葉がすくすくと落ちるのだ。それのどこが悪い、と言いたくなるが、コミュニケーションの道具である以上、とりあえずは世間で共有されている言い方を覚えないと意味がない。言語は生活の中で覚えるべきなのだ。

* * *

今、長男は自分のコンピュータが欲しいようだ。10年前の古いコンピュータを引っ張り出してきて、Xubuntuを入れようと格闘している僕をみて、そのコンピュータが直ったら、どうなるのかと母親に訊きにいったらしい。母親はあっさりとそんなことはお父さんに自分で聞け、と言っておしまいである。

これはお前にやるために直しているのだ、という以外の回答が思いつかなかった。その10年前のしろものはみるからに古くさく汚いコンピュータなのだが、長男は飛び上がって喜んだから驚いた。家族が共有しているコンピュータは、Vaioのかなりハイエンドなものだから、1年くらい前に買ったものでも、Vistaが載っているにもかかわらず、ガンガンと剛球のようなスピードで動いているし、何よりも10年ものよりカッコもいい。しかも、家族の共有といっても、母親はGmailのチェックの仕方と、Skypeでの電話のかけ方しか知らないから、平均して一日10分も触ってないだろう。5歳の弟は兄がオンライン・ゲームをする時に横につきそい、本人はなんとか参加しようとするのだが、長男からすると、結果的には考えられる限りすべての邪魔をすることに熱意をもやしているように見えてしまうわけで、争いが耐えない。ともかく、長男が使う時間が圧倒的に多いのに、それでもVaioより、このボロ臭いコンピュータが欲しいというのがおもしろい。これはやはり所有するということに潜む魔法なのだ。共有と所有の間には、男と女の間の溝くらいに深くて暗い、決して埋まらない溝が存在する。

「所有する」という感覚、そこから来る愛着や責任、それが人間の集まりである社会の基礎になっている。ある個人にあるものがLocked inされるという方が分かりやすい表現かもしれない。Locked in されたものをその個人が大切にする。大切にされたものが集積すると大切な社会ができる。共有とはいうのは誰にも、どの個人にもlockされていないということだ。鑑賞をすることはできる、愛でることもできる、でも大切にはしない、どうせ自分のものじゃないのだから。だから、「公」という概念は実に微妙だ。「公にものを大切にしましょう」というスローガンはあまりに空虚に吹き荒れては、そのまま吹き飛んで行く。

しかし、「公」という概念が必要なことには違いないのも事実だ。すべてのものを個人の所有に振り分けるわけには行かないのだから。じゃあ、「公」にもっとも必要なものは何か、もっと凄みのきいたスローガンだろうか。僕はそう思わない。とても単純なことだ、それは「公」に帰属しているという感覚のみだ。帰属意識というのも、また一つの魔法的な感情だと思う。帰属するという感覚を持つことによって、その瞬間からその人のメンタルマップの中で「公」が擬似私物的な位置づけを得るのだ。所有のもつ炸裂ドライブよりはすこしスペックは下がるかもしれないが、愛着から責任の精神の力学がここで起動する。だから、人々が帰属意識を持てないような国家、企業、集団、家族は、問題だらけとなる。

僕はありとあらゆる社会科学に首をつっこんだが、こういう人間の心理のダイナミズムとか心のあやというか、とらえどころのないものををうまく”科学”的なものに合成していかないかぎり、トンデモ政策はあとをたたないだろうという結論にいたった。あえてスローガンにすると、科学から情へ、情から科学へ、ということなのだが、専門の社会科学者から見れば笑止千万なのだな。

* * *

テストが終わってどうだった?と聞くと、うーん、国語は全部できた、算数の問題が一つ漢字が分からなかったからできなかった、という。文章題に出てくる漢字が分からず、問題の意味が分からなかったのだ。家で練習していた時にもそういうことはしばしばあった。そんなことは先生にきけばよかったのにと言ったが、こういうところだけ、控えめさを(日本的美徳、とは思っていないだろうが)、そんな習慣を学んでしまっている。インターナショナルスクールでは、すべての生徒が同時に質問をし、まるで動物園かとみまがうほどの騒乱状態になる。この歳にしてすでに、郷に入れば郷にしたがえ、なんてことも学んでしまったのかもしれない。

とりあえず、テスト勉強には成果があるという経験ができたことは良かった。テストの直後に先生にあったが、「よくできてました、これなら進級させようと思います」だと。こういう時、普通はお礼を言うものだろうと思ってお礼を言ったが、いったいこれは何に対するお礼になるのだろうか。このテストにもっとも貢献したのは長男本人なのだが、彼はそんなことにはまったく関心もなく、すでにグランウドでサッカーをして騒いでいる。

* * *

10年前のコンピュータは結局スペックが低すぎた。どうにもならん。翌日、それを長男に言うと、明らかに落胆したようだった。親として子供の落胆する姿ほど見たくないものはない。ここで、宣言した。

次の誕生日(7月22日)までにブラインド・タッチができるようになれば、僕のコンピュータをやる!と。

長男の目がまた輝いた。最初は、最近僕が買った小さなネットブック(EeePC S101)をもらえると思ったようだ。しかし、最初に小さいキーボードを覚えてほしくない。あれじゃない、あれより性能が高くて大きい方だ。それでも、当時では一番薄く、一番軽かったコンピュータなのだ、というと、これは元々スタイリッシュなデザインでもあるので、長男の目はさらに輝いた。(dynabok SS SX/290NRというのが3年前に買ったやつ)

さっそく家族コンピュータのVaioに戻って、僕がインストールしておいたRapid Typingで、タイピングを練習し始めた。実際、最初にちゃんとブラインド・タイピングを覚えていないと、その後のコンピュータ人生の半分くらいの時間を浪費するのと同じことではないかと思う。だから、ここは強調してきっちりできるようになったら、お下がりではなく、新品を買ってやろうとかと思っている。

僕が彼にあげると言ったのは、先日からKubuntuを入れて実験的探求をし続けているやつで(dynabook SS)、そのうち僕がメチャクチャにしてしまう可能性も十分ある。今は安くて良いコンピュータが売っているので、息子にあげるのはこれにこだわる必要はないだろうと思って、ネットで今手に入るコンピュータをサーチしたが、OSを何にするかという根本的なクエスチョンには困る。学校ではもうITの授業をやっているので、一度話を聞こうと思うのだが、おそらくWindowsベースだろう。学校に合わせる必要もないが、Windowsにまったく触れないと世間で困ることがでてくるだろう。結局こうやって悩んでみんなWindowsを使い続けるのだろう。ここはこの悪の連鎖を断ち切りたいものだと。

DellがUbuntu搭載のPCを売っているではないか、ネットブックにはLinux搭載のものが他にもあるのを知っていたが、Inspiron Mini 12 というのは、その大きさから言うとネットブックとラップトップの中間くらいに見えるが、これにUbuntu搭載モデルがあるのを発見した。しかも、39800円。なんてことだろう。デンマークで下手なメシを一回食ったら終わってしまう値段だ。仕事でドバイで止まるホテルより安い。オフィスで支給されているスマートフォンより安い。

DELL Inspiron Mini 12 Ubuntuパッケージ
インテル(R) Atom(TM) プロセッサー Z520 (1.33GHz, 512KB L2キャッシュ, 533MHz FSB)
Ubuntu 8.04 (DELL カスタマイズ版)(最高)
1GB DDR2-SDRAM メモリ(この値段なら良しでしょ)
12.1インチ TFT TrueLife(TM) WXGA 光沢液晶ディスプレイ (1280x800)(いいサイズ)
40GB PATA HDD (4200回転)
(SSDなら尚良し)
光学ドライブなし(しゃあないでしょ)
内蔵ワイヤレスLANカード (802.11b/g対応)
インテル(R) GMA 500 (チップセット内蔵)
Microsoft(R) Office なし
(素晴らしいです)
299 x 229 x 23.3-27.6 (mm)
1.24kg (3セルバッテリ搭載時。重量は構成によって変動します)

販売価格 49,980円
割引額 10,000円
特別価格 39,980円 本体分配送料込み(3月2日現在)


そんなこんなでデルページを見ていたら、XPS M1330 というのも目に入った。あるいは目を疑った。このスペックでこの値段、89,980円?!う〜む、これにKubuntuを入れてガンガン使ってみたい。しかし、なんでVistaなんて入れてるんだ、これ?そのうち苦情ブイブイきて、XP版が出て、そのまた次にUbuntu版が出たりしたら最高なんですが。DELLのコンピュータにはろくでもないソフトがてんこ盛りに詰め込まれていないのがDELLの一番いいところだ。

DELL XPS M1330
インテル(R) Core(TM) 2 Duo プロセッサー T8100 (3MB L2キャッシュ、2.1GHz 800MHz FSB)
Windows Vista(R) Home Premium SP1 32ビット 正規版 (日本語版)(バカバカしいです)
4GB(2GBx2) DDR2-SDRAM デュアルチャネルメモリ(すごいじゃないですか)
13.3インチ TFT TrueLife(TM) WXGA 光沢液晶ディスプレイ(1280x800)(ちょっと大きめだけどいいか)
250GB SATA HDD (5400回転)(SSDなら尚良し)
DVD+/-RWドライブ(2層書き込み対応)
Core 2 Duo向け Dell Wireless(TM) 1505 内蔵ワイヤレスLAN Miniカード (802.11a/b/g/n対応)
NVIDIA(R) GeForce(R) 8400M GS 128MB DDR3
Microsoft(R) Office なし(素晴らしいです)
幅: 318 mm
奥行き: 238mm
高さ: 22.1-33.8mm
重量: 1.8kg(ちょっと重い)
販売価格 99,980円
割引額 10,000円
特別価格 89,980円 本体分配送料込み(3月2日現在)

dynabook SS RX2 T9HG がいいかなあと思っていたのだけど、値段が違い過ぎる。
インテル® Core™ 2 Duo プロセッサー 超低電圧*版 SU9300 動作周波数1.20GHz(いいなあ
Windows Vista® Business 32ビット版 with Service Pack 1 正規版(最悪
(Windows® XP ダウングレード用メディア付)(※1)
3GB(1GB+2GB)/3GB, PC2-5300(DDR2-667)対応 SDRAM、デュアルチャネル対応(なかなか
12.1型ワイド WXGA 半透過型TFTカラー液晶(省電力LEDバックライト)1,280×800ドット(好みのサイズ
128GB SSD(Serial ATA対応)(これがいい!
DVDスーパーマルチドライブ
Microsoft(R) Office :ワード・エクセル・パワーポイント(ど最悪・無意味)
IEEE802.11n ドラフト2.0、IEEE802.11a/b/g準拠
(Wi-Fi準拠、128bit WEP対応、WPA対応、WPA2対応、256bit AES対応)
約283.0(幅)×215.8(奥行)×19.5〜25.5(高さ)mm
重要:933g(最高
価格:オープンプライス
参考価格:269,700円(下がれー!VistaをUbuntu/Linuxにかえて、MSOfficeその他どうでもいいアプリを全部外して、20万円切りを敢行すれば旋風が起こると思う。どうですか?東芝さん。これじゃあ、Dellに流れるでしょ。僕は二回もdynabook買ったんですよ、そのへんを考慮してですね、なんとか)


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