五歳の次男はどうも最近、無限という概念に突き当たっているように思える。
いつだったか、1、2か月前だったと思うが、「数はいつ終わるの?」ときかれた。
数が終わる?直接的にはいつ数え終わるかという当面の問題を抱えているうちに、数はどこまで行くのかという疑問に発展したのだろう。
終わらないよ。いつまでも続く。永久に続く。という僕の回答は実は回答になっていない、ということは分かっている。彼の頭の中にある疑問は、終わらないということはどういうことなのか、いつまでも続くということはどういうことなのか、ということなのだ。ほとんどの大人の訳知り顔で子供にする説明は底が抜けたバケツのようにマヌケなもんだ。また一発僕もここでマヌケをかましたわけですが。
この疑問は僕にとっても解けずにずーっと心の中にしまっていたものだと白状する時期がいつか来るだろう。その時には二人で無限の恐怖と希望に立ち向かえたらいい。
一つ去ってしばらく立った頃に、もう寝るよというベッドの中で、ひょこっと、次男がきく。
"Papa, when is going to be future?" (いつ未来になるの?とでも訳すか)
"Uhhhhnn, future is..., ahh, uhh, for example, tomorrow is future, next week is also future, next month is also future. Any time after now is future.
たぶん、いや確実にこの回答では彼のもっと根本的な疑問の回答にはなっている。次男はしばらく考えて、
"Then they are going to make a flying car in future? ときく。
"We don't know when, but maybe somebody will make it. When I was a small child, we didn't have a computer. But then somebody made it, and now everybody uses it."
"So who will make a flying car?"
"You, make it. You can make it if you want."
"But I don't know how to make it. I know how to make a cup with clay, and I know how to make a stamp with clay, and I know..."
(そしたら、未来に飛ぶ車ができるの?
(いつか分からないけど、でも誰か作るでしょう。僕が子供の時はコンピュータなんてなかった。でも、誰かが作って、今はみんなが使ってる。)
(じゃあ、誰が飛ぶ車を作るの?)
(おまえが作ればいい。作りたければ作れるよ)
(でも、作り方が分からないよ。粘土でコップを作れるけどね。粘土でスタンプも作れる。他にも、何があったかなあ・・・。)
なんとも可愛いではないか。自分のできること一覧が彼の頭の中にはあるのだ。おもしろい、でもまだ未来という概念については解決していない。
"Then when was the past? "
"Yesterday is the past, last week is also past, Any time till now is the past. Papa was born in the past."
"So you didn't have anything? No car? No washing machines? No TV? God just made the world?"
"Ah, I was born long, long after the world was created. When I was a child, there were already TV, car, washing machines etc. but just not computer yet."
(じゃあ、いつが過去?
(昨日は過去、先週も過去、今より前は全部過去。パパは過去に生まれた。)
(そしたら、パパは何もなかったの?車も、洗濯機も、テレビも。神様が世界を作った時でしょ。)
(あー、パパは世界ができてから、ずっと後に生まれた。だから子供の頃にはもうテレビも車も洗濯機もあった。でもコンピュータはなかった。)
"I think you should go to sleep now"
"Un, I will make something else with clay next time"
"Ah, you talked about future. You just said that you will make something in future. Next time is future."
"Oh, yeah, next is future? OK, I got it."
(もう寝た方がいいよ。)
(うん、次は粘土で何か他のもの作る)
(あ、未来について話した。何か未来に作るって言ったんだよ。次ってのは未来ってこと。)
(あー、そうか、次は未来か。分かった。)
数分後にはすやすやと寝息を立てていた。彼の頭の中で今何かが繋がって行ってるのだろうか。