Tuesday, April 21, 2009

夢の小便

5歳の次男を夜中におしっこに連れていくという重要任務がある。言うまでもなく、オネショ防止策だ。だいたい12時から1時の間に僕が連れていくのだが、熟睡している子供を起すのは気が引けるものだ。

何語か分からないが、次男はおしっこのことをピシと呼んでいるので、耳元でピシ、ピシとささやいてみる。まったく微動だにしない。肩をもって少しゆすってみるが、まったく変化なし。しかたないので、両腕の下に手を入れて次男を持ち上げる。すると、猿のようにくるっと両足を僕の胴体に巻きつけてくる。夢と意識の間くらいにいるのかもしれない。

倒れないように、両わきの下を支えたままトイレの便器の前に立たせると、ふらふらしながらも自分でパンツをさげる。僕がそこで、またピシ、ピシというと、ちょろちょろちょろっとおしっこを始める。その間にも頭はたら~っと横に倒れ、身体も倒れそうになるので、しっかり支えておかないといけない。

去年の12月、僕の右肩の痛みが激しくなるにつれ、この毎晩の日課がだんだん厳しくなってきた。次男の体重は20キロほどだ。だんだん重くなってきたように思った。子供はすぐに大きくなる。なるべく右肩に力が入らないように工夫して、この日課を続けていた。うっかり忘れると半分くらいの確率でオネショをする。そして母親の機嫌を朝から台無しにする。これを避けたくないものは歴史上、世界中に一人も登場していないだろう。

こんなに重くなってきては、いずれこれも続けられなくなる。早く自分でめざめて自分でおしっこに行けるようにならないとダメだと何度も次男には言うが、いったいどういうきっかけで人間はそういうことを覚えるようになるのか、そこのところが分からない。

しかし、絶体絶命の日がとうとうやってきた。右肩の手術の前の日、次男に予告しておくことにした。明日の朝、お父さんは右肩の手術をするのを知ってる?明日の夜はお父さんは右腕がつかえないから、もうだっこしてトイレに連れていけないよ。自分でちゃんと起き上がってトイレに行かないとダメだよと。

手術の夜、ちょうど麻酔切れの痛みがピークに達している頃、次男の耳元でピシ、ピシとささやいた。すると、なんと驚いたことに、自分でむくっと起き上がったではないか。ベッドからはい出てふらふらとトイレに向かって歩き始めた。こけるのではないかと、思わず右手を出しそうになって、激痛に叩きのめされ、一人頭の中で悲鳴をあげた。左手で次男の身体を支えようとするが、どうもそんな必要もなく、目をつぶった酔っ払いのようにふらふらしながら、次男はちょろちょろちょろっとおしっこをしていた。まだ夢の中なのだろう。

今日いつものようにピシ、ピシと耳元で囁いたがまったく動こうとしない。しょうがないので、また抱きかかえてトイレに連れて行った。ふと気がついた。なんだ、まだこんなに軽かったのだ。重くなってきたと感じたのは自分の右肩のせいだったのだろう。

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