Sunday, April 05, 2009

しょぼっ

全然あかんわ。やっぱり13日金曜日という日付が効いたか。
手術から3週間経ったが、改善の気配はなし。痛かっただけかいな、ほんまに。
いやぁ、痛かったなあ、手術の後。深夜一人で家の中をのたうち歩き回りました。

3月13日金曜日の朝7時15分に集合ということなので、遅刻してはいけないと前日からはりきり過ぎてほとんど寝ずに病院に行った。病院に着くと、他に手術する人が二人いた。僕を入れたこの3人が今日の第一ラウンドらしい。

アレルギーはないかとか、薬は飲んでないかとか、すでに紙に書いて提出したことをまた二人の人に別々に一回ずつきかれる。右肩か左肩かどちらの手術かという質問をするのでやや笑えるが、間違えられると困るので、真面目に答える。

右肩から先を完全に麻酔で麻痺させるために肩というより右胸の上の方に、麻酔医が何か差し込んだ。ディスプレイに写っている画像を見ながら、神経を探しているらしい。ぼーっとその画像を見ていると、無意識にギャッと叫んでしまった。神経を探り当てたらしい。そこで止まって、麻酔薬を注入し始めた。

15分ほどすると、腕の感覚がなくなった。手術室に移動するのだが、誰かが僕の右腕をもたないと、右腕だけ付いてこない。これはかなりやっかいだなと。

手術室に入ると、3人ほど女の人がいた。「ハーイ、私は○○よ、お元気〜?」みたいな調子に乗った挨拶をそれぞれがする。こっちは右腕が自分に付いてきているかどうかが気がかりで、そんな気分じゃないんだって。

手術だからてっきり全身裸にされて、エプロンみたいなものを着せられるのかと思っていたが、脱ぐのは上半身だけで、下はジーンズをはいたまま。日本でもこういうものなのだろうか。

手術室に入ってくる前にすでに、左腕に注射針が突っ込まれて固定されていて、胸には三箇所くらい吸盤に電線が付いたようなものを付けられていたのだが、手術室ではさらに鼻の穴に酸素チューブを突っ込まれた。完全武装をしたような気分になる。

また、テレビ画面のようなものがあり、それで右肩の中身を見ながら手術を受けるかどうか、音楽を聞きたいかどうか、そんなことを訊かれるが、前夜からの興奮状態がピークを越えていて、すでに疲れて、やや吐き気がしていたので、眠りたいと答えた。そしたら、また素っ頓狂に景気良く、「わかったわぁ、じゃあ、眠らせてあげるわネ」みたいな返答が女の人から返ってくるので、やや不安になって、「いつ起きれますか?」と即座に訊いた。すると「手術が終わったら直ぐよ、直ぐに起こしてあげる」というではないか。ますます不安になる。眠り薬を腕から入れるのか鼻の穴から入れるのか知らないけど、そんなに簡単にスイッチを入れたり切ったりするみたいに寝かしたり起こしたりできるのだろうか。そんなことを考え始めたが途中ですでに意識はなくなっていた。

* * *

パッと目が覚めた。妙に鮮やかな目覚め。まわりを見渡してみる。手術室に行く前の部屋だ。壁時計を見ると、最後に見た時から、ちょうど1時間しか経ってない。そんなバカな、と思うが、僕のまわりの事態は実に普通に続いているので、その通りなんだろう。確かに医者は1時間くらいで終わるとは言っていたが、いろいろな手間も入れると1時間ちょうどというのは早すぎるのではないか。

僕が目覚めたことに気づいた看護婦さんが、「ハーイ、気分はどう?何か欲しいものある?」と訊く。気分は悪くない。3日間寝たくらいすっきりしてる。しかし、やけに喉が乾いている、と言うと、水を入れたコップを持ってきてくれた。思わず意識ではそれをとろうと右腕を動かすのだが、何も起こらない。右腕がなくなったのかと思って、見てみると右腕はまだそこにある。が、まったく微動だにしない。コップをもった看護婦はニコニコしながら、ストローを口まで持ってきてくれた。

「手術はどうだった?」ともっともあり得べき質問をすると、医者がすぐ来るから彼に訊いてちょ、だと。まあ、それもそうだと納得。

しばらくすると手術をしたタコに似た顔の医者が来た。気分はどうだとまた訊かれる。いいよ、いいよ、それより手術はどうだった?ときくと、石灰化した部分が見つからなかった、と言うではないか。はあ?手術前にレントゲン写真を見て、あれほど確認したのに、見つけ損ねたのか、このタコ。

なんか形勢不利と感じたのか、即座に医者は、「いや三箇所から入って調べたんだ、でも・・・」と言って、ちょっと肩を落としてうつむいてから、「それでも関節の部分をきれいに削ったから、もう肩は動くよ、ほら」と言って、まったく感覚のない僕の右腕をつかんで上に上げてみる。で、次に医者に会うのは三ヶ月後だという。そんなもの?せめて一週間くらいしたら、手術がどうだったか見てみるとかそういうことにはならないんですかね。

で、月曜日からフィジオセラピーに行けだと。それって、3日後でしょ。人の体に三箇所も穴開けた人の言うことかね。穴から一斉に血吹き出したりしたらどうすんの?いやぁ、ダメ臭い。これはダメ臭いと思った。でも、もう終わったことだから、しばらくそれなりに経過を見てみるしかないと強引に納得。

* * * 

昼頃には退院。直前に看護婦から12時間から14時間で麻酔が切れるから、痛くなったら、これとこれを飲んでと二種類の薬を渡された。そして、かなーり、もったいぶって、どうしても痛みが耐えられなくなったら、これを飲んでともう一種類カプセルを渡される。

そんな話をしている時に、なにかゴトンと漬物石のように重みのあるものが落ちる気配がしたので、はっと下を見ると自分の腕ではないか。看護婦が笑って、「あなたの腕よ、まだあるわよ」と言って、僕の右腕をつかんで持ち上げる。まったく感覚がないので、異物のように扱わないといけない。これはかなり注意しないと家に到着するまでに右腕を傷つけてしまいそうだ。

家に到着すると、大成功という喜びはなかったものの、やっと終わったという興奮が続いていて、落ち着かない。右腕を左腕で保護しながら、立ったり座ったり歩いてみたりする。そのうちに子供が帰ってきて、不思議そうに見ながら、腕をどうしたときくが、なんとこたえても納得させられそうにないので、右肩の中からゴミをとったと答えた。

晩ご飯が終わった頃から、右腕の感覚が本格的に戻ってきた、と同時に、なんとも説明不可能な痛みが右肩全体に沸いてきた。鮮烈な痛みではなく、そこ深く意地悪いおもーい痛みだ。右肩三箇所に釘を打ち込んで抜いてみるとこんな感じで痛むんだろうと思う。拷問反対。

みんな寝静まった夜中に痛みがピークに来たようだ。そんな怪しげなもの飲んでたまるかと思っていた三種類目のカプセルにとうとう手を出してしまった。これはなんなのだろう。頭をどこかでゴーンとぶつけた時にくらっとする、あのくらっによく似た感じを覚えた。そして確かに痛みは和らいだような気がする。しかし、完全除去というわけにはいかない。結局、朝まで何もできず、家の中をうろうろして、ただ痛みをしのいでいた。

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