Friday, May 19, 2006

ソフトシェルクラブ

午前中はまたディスカッション。今後三年間の戦略ペーパーなるものを作っているのだが、サンディとマットと僕の三人で同時に違うところを書き分けて、それ を一つにするという作業を繰り返すので、頓馬なことをするといくつも変形version ができてしまう。事故を避けるために、僕のPCで常にマスターversion を維持することにして、今朝の時点では、Version 4.0 だったのが、それでも何度も右往左往し、正午にはVersion 9.0 に達していた。しかし、完成にはほど遠い。

日曜日にはカブールに着くので、月曜日にカブールで皆の衆を召集してブリーフィングをし、皆の衆のインプットを募り、月末までに完成するという空想を立て ている。たぶん、無理だろう。結局、最後には一人で暗い屋根裏部屋に閉じこもって、何の勝算もない賭けに全財産をつっこむようなペーパーを形だけでも完成 せざるを得ない苦しみにもだえる図が僕の頭の中では着々と完成しつつあった。

最後にDisaster Management Centre 所長のアラスター氏に、この二日間の成果(?)のブリーフィングをし、12時きっかりに終了した。サンディは自分の車で来ていたので、家まで5時間のドラ イブに出発した。僕はSwindon という駅から電車に乗ってロンドンに向かった。昼ごはんを食べてなかったので、Swindon 駅で、バゲットのサンドウィッチとコーヒーを買った。6ポンドほどした。1000円くらいだ。高いなあ。

ロンドンのパディントン駅には1時間ほどで着いた。ハリーポッターを思い出すような、古めかしく大きな駅だ。少し見覚えがある。15年前に通過したのだろ う。そこから黒いタクシーに乗って、インターネットで予約したThe Westbury Mayfair Hotel に向かった。この黒いタクシーはそのまんまだ。15年前も一台欲しいと思ったが、また今も一台欲しいと思った。

ホテルはとてもイギリス的な石壁に内部は質素でダークな色合い。けばけばしさが微塵もない。部屋はこじんまりとしている。これで一泊128ポンド(2万5千円くらい)は高いような気がするが、ロンドンの相場ではこれくらいなのだろう。

今回の出張は、仕事はどうでもよいわけでもないけど、まあ個人の心情的にはどうでもよくて、それよりも、若くしてケンブリッジに学徒出陣したAさん に会うのを僕は楽しみにしていた。ショーコさんと同じ歳だから、かるく二世代くらい年下なのだが、彼が日々重ねているインプットや、それに対する彼自身の リアクションの話は、僕にとってもおもしろい。僕がするひまがなくなったインプットを彼を通してすることもできるというもんだ。

夕方、ホテルを訪れたAさんととりあえず近くのパブへ二人で行った。Aさんは何を気を使ったのか、カブールを発つ前、何通りかの組み合わせの 同行者について打診してきたのだが、今から思うと、日本人ゲストには若い女の子を連れて行くというような気も一応使わないと、なんだ気のつかない男だ!あ いつは仕事ができない!なんて、日本のまっとうな男社会人世界では思われたりしかねないからだったのかもしれない。商社に勤める友人に聞いた、日本からの お客さんを迎える苦労話を思い出した。

パブではビールを一杯だけ飲んで、次にAさんが予約していた『馳走』というお店に行った。そんなに高くない居酒屋のようなところと聞いていたが、 行ってみると、小さいけど、小ぎれいなインテリアに、小ぎれいな日本人ウェイトレスに、小ぎれいなイギリス人の女二人組みが僕とAさんの席の隣にい た。カブールのごつい世界に目が慣れているせいか、みんなどうしてこんなにちっちゃくなっちゃったんだろうとしばらく考えていた。とても華奢な身体つき に、小さな顔に、小さな服を着た女な子たちを見て、小人の世界に入ってきたような気分だった。

メニューを見ると、かなり好きなソフトシェルクラブがあったので、まっさきにそれを注文した。15年前も僕は中華料理屋でソフトシェルクラブだけを注文し、ワインを一本頼んで、一人で本を読むというのが習慣化していたのだった。

今日のメニューは、

ソフトシェルクラブ唐揚
あんこうの肝
寿司特上盛り合わせ
鮭皮巻き
牛肉のたたき
キムチ奴豆腐
豚ばらキムチ
こんにゃく味噌田楽
五目そば
五目うどん
サッポロビール小瓶1本
ミネラルウォーター小1本
焼酎ロック・ダブル無数

10時頃に店を出たのだが、僕はかなり酔っ払っていた。全部で、163.13ポンド(約3万円)。Aさんはあれっ?という顔をしていた。一人当たり 80ポンドを超えたのは初めてだとつぶやいていた。つまり、思ったより高かったらしい。ロンドンの物価事情が分からない僕としては高いのか安いのか分から ない。後でレシートを見ると、

Food: 85.70
Drink: 59.30
Service: 18.13
Total: 163.13

となっているから、食べ物的にはそんなに高くないんだろう。飲みすぎただけじゃないだろうか。何杯飲んだか覚えてないし。

外に出ると、とても寒い。小雨がパラパラと降って、夜の路面が光っている。とてもロンドンだなあと思った。また、この数日間、頭の中に繰り返し出てきた 「石文化は強い」というフレーズが訳もなく出てくる。ホテルの部屋にたどり着くと、僕はびしゃびしゃになった服を脱ぎ捨てて、すぐにベッドに入った。

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