Saturday, January 12, 2008

メスウッド-遅れてきた青年

また一人ヒーローの誕生か、
と、Baitullah Mehsud – The Taliban’s New Leader in Pakistanという記事を読んで思った。アメリカ及びその同盟国から見れば、ヒール(悪玉)なわけだけど。

パキスタン・アフガニスタン国境付近の部族地域を統合するリーダーとして、パキスタンでは既に過去3年くらいで泣く子もだまるステータスにのし上がってきたようだ。2万人の戦士が支配下にいるとか、数百人のフィダイーン(死ぬことをなんとも思わない、あるいはもう死んだ気の戦士)がいるとか、アフガニスタン内の自爆攻撃の80%は彼の指示によるとか、いろいろ書いてあるが、こういう数字はあてにならないとしても、今彼がこの世界でもっとも脚光を浴びる地位に上昇してきたのは間違いなさそうだ。

去年9月の国連の報告書に出ているくらいだから、既にこの業界では有名だった言ってもいいのだろうが、ブットー暗殺の黒幕として名前が出てきたので、今後一般にも知名度は上がるかもしれない。yoshilog でもいつか書いたかもしれないが、部族地域のワジリスタンでは部族とパキスタン政府との間で休戦協定が成立したことがある(アフガニスタンでもイギリス軍がムサカラという村で似たようなことをやってアメリカがカンカンに怒った)。

その当時、ワジリスタンの部族のまとめ役をやったのが、メスウッドだった。だから、その頃は彼はパキスタンでは「平和の戦士」なんて呼ばれていたのだから、パキスタンにとっては、とんでもない展開になってしまったってところだろう。赤いモスク事件が縁の切れ目になったようだ。

という事件史にあまり興味はないのだが、彼が今34歳というのを見て少し感慨深いものがあった。ソ連相手の聖戦、もしくはチャーリーの戦争の真っ最中、彼はまだ小学生から中学生程度の歳だ。初めてカブールで仕事を始めた頃(1997-2002)、一番若いスタッフ達はほんの少しムジャヒディンを経験して内戦が始まったという世代だったが、メスウッドは彼らよりもさらに若い世代なのだ。

この記事を読みながら、まったく関係ないが、『遅れてきた青年』(大江健三郎)を思い出していた。傍観者の書く"凧揚げ"と"本屋"だけではアフガニスタンは分からない。このすべてのど真ん中に居続けるアフガン人が何を考えてきたのか知りたい。そんな文学がいつか現れるのだろうか。

No comments: