Thursday, January 17, 2008

エコノミック・ヒットマン

 エコノミック・ヒットマン(EHM)とは、世界中の国々を騙して莫大な金をかすめとる、きわめて高収入の職業だ。彼らは世界銀行や米国国際開発庁(USAID)など国際「援助」組織の資金を、巨大企業の金庫や、天然資源の利権を牛耳っている富裕な一族の懐へと注ぎ込む。その道具に使われるのは、不正な財務収支報告書や、選挙の裏工作、賄賂、脅し、女、そして殺人だ。彼らは帝国の成立とともに古代から暗躍していたが、グローバル化が進む現代では、その存在は質量ともに驚くべき次元に到達している。
  かつて私は、そうしたEHMのひとりだった。・・・
」(『エコノミック・ヒットマン』ジョン・パーキンス、東洋経済新報社の序文から)

帰国している時に久しぶりに本屋に行って何気に買って、こっちまで持って帰ってきたのだけど、まるで映画の宣伝文句のような華々しい序文に比べると、中には非常に地味でフラストレーションに満ちた日常、あーそーそーと思わず、もがいてしまうような見慣れた風景が描かれている。トンでも本に位置づけるのは惜しい本だ。

実態として起こっていることはトンでもないことの連続なのだけど、とても興味深いのは彼らが確信的な点だ(著者自身はそれが揺らぐ例外の一人だったわけだけど)。同様のことをやるはめになり、同様の批判を浴びている組織はいくらでもあるが、そこで働く人間の多くはもっとナイーヴで何をやっているのか分からないと思う。同じことの裏と表ではあるのだが。

時代が変わるにつれ、呼ばれ方は変わってきたにしても、それぞれの時代の帝国にこういう職があったという指摘はおもしろい。それぞれの時代のそれぞれの帝国のこういう職能集団をもっと具体的に知りたいものだ。

それにしても、この書名なんとかならなかったのかな。これじゃ、売れないでしょ。

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