Thursday, May 12, 2005

だらだら・・・

昨日の夜、気になるテレビ番組「American Idol」を見ていると、ラースがリビングルームにどどっと入ってくるなり、アメリカでなんか変なこと起こってるぞ、ライブ中継してる、と言うので、ニュースチャンネルにかえると、BBCもFoxもホワイトハウス周辺を映しっぱなしにしてる。

ホワイトハウスはevacuation, 上下院ともevacuation, とか、なんだか物騒な気配が漂っている。未確認の飛行機がホワイトハウスに近づき、確認しようとしたが応答がなかったためだそうだ。F-16がスクランブル発進し、ブラックホークも飛んでいる。

なんだかよく分からないので、リビングルームにあるPCでCNNのサイトを見ると、なんと第一面は、ジャララバードのデモの記事だった(日本とはえらい扱いが違う)。その上に、緊急ニュースとして、ホワイトハウスでevacuation、詳細はこの後すぐに、みたいなことが書いてある。何が起こっているか、まだよく分からないらしい。

911以後、GWOTという変な言葉がよく使われるようになったけど、どうせなら第三次世界大戦中とかなんかもっとはっきりした言葉使った方がいいんじゃないのかな。言葉はどうでもいいとしても、確かに僕らは今GWOT中なのだと思う。

しばらくすると、ワシントンDCには、All clear が発令されて、ホワイトハウスにも人が戻り始めた。

と思ったら、見たことない人がリビングルームに入ってきた。ヤーァといって簡単に挨拶して、どこから来たのか訊くと、ジャララバードだった。なんとか混乱を脱出したグループの一人だった。今日、彼を含めて6人が飛行機で退避してきたそうだ。ヘリコプターで出てきた人たちもいるので全部で何人ジャララバードからカブールへ来たのか分からない。

ゲストハウスが略奪されて燃やされた、全部なくなった、と彼はボソッと言って、リビングルームのPCに向かった。きっと誰かに連絡するのだろう。

今日、オフィスに行くと、すぐに国際スタッフを全員集めてセキュリティのミーティングが行われた。最新の状況のブリーフィング。コーランの侮辱に対する抗議で始まったデモだったが、デモ中に四人殺されたことで、今はそれに対する怒りがデモの目的になってきているとか。

まだ、ジャララバードには二十数人取り残されている。午前中に国連機を二便飛ばして全員カブールに移動を終える予定。今日からカブール市内の一切の移動に許可が必要になった。ちょっとタバコを買いに行ったり、ゲストハウスにランチを食べに行ったりなんてのも許可が必要。オフィスの時間もいつものようにだらだらと10時頃まで仕事するわけには行かなくなった。定時通りに8時から5時の間に仕事をして帰宅するようにということだった。(その1時間後に帰宅時間は4時に引き上げられた。)

明日は金曜日でオフィスは休みのはずだが、国際スタッフはオフィスに来て仕事していることが多い。しかし、金曜日はモスクに人が集まる日なので、お祈りの後、自然発生的なデモのような状態になることが多いから、明日はessential staff のみ出勤ということになった。誰がessential staff なのかという質問。セキュリティ担当と所長の二人という回答だった。

ミーティングの後、続いて所長と別件のミーティング。他機関も関係している話なので、そこと別のミーティングが今日5時に設定された。えっ?5時?話が違うと思ったが、こんなもんだ。続いて、同じ場所で別件のミーティングのために、もう二人スタッフが入ってきた。これも30分ほどで終えて、続きは明日の朝6時からと所長が言った。えっ?明日?金曜日に?朝6時に?という僕の質問に彼はすべてうなずいた。笑って、OK と言うしかない。でも、なんだったんだ、朝のセキュリティミーティングは。しばらくして、不満気な雰囲気を察した所長は10時からでもいいけどと言い出したので、結局10時からになった。

それから急いで自分の部屋に戻ったら、ミーティングをする予定のアフガンNGOの人がすでに待っていた。セキュリティにお金を使ったがどこにチャージしたらいいのか分からないという話。また、セキュリティか、と思う。もう一つの話は、承認されたばかりの予算にまちがいがあったので、なおして欲しいという話。

NGOといっても、一つのプロジェクト予算だけで10億円を超えているし、職員は1500人もいるから、中小企業といってもいいだろう。こういう組織をちゃんと経営するのも企業社会がまだまだ根付いていないアフガニスタンの人にとっては、なかなか大変なのだ。

二つが解決して、また今度は別のビルにいるITシステム担当の人とのミーティングに行った。途中で、渉外担当のスタッフを誘って行った。最近、あるドナーが新しいウェブベースのデータシステムを作ったので、資金を提供しているすべての組織にそれにデータを入力して欲しいと頼んでいる。

このドナーの資金のプロジェクトを担当している人がいるので、僕はその人がやればいいと思うのだが、いや、これは外の人と関わるので、渉外担当者がやるべきだとか、ITが関係しているので、IT担当者がするべきだとか、いや、契約とか財務関係は誰も分からないからプログラム担当者がするべきだとか、いや、プロジェクト進行中の財務情報を要求されているなら、それは極秘情報だから誰にも見せずに断るべきだとか、いろんな意見が出て、何にも決まらない。ドナーが、Absolutely required といって頼んできたことで、しかも昨日中に担当者を伝えなければいけないのに、こうやってほんの些細なことでもなかなか決まらない。国連らしいと言えば、国連らしいだろう。

いつまでも同じ話を繰り返していてもしょうがないので、セキュリティでばたばたとしている混乱に乗じて、このミーティングでさっさと担当者を決めてしまおうと思っていた。一応、なんとか進みそうな気配で話は終わった。

部屋に戻ると、所長が部屋に入ってきた。バグランのIPのオフィスが襲撃され、車が全部破壊された、ワルダクでdeminer が人質にとられた、ヘラートでdeminer が三人死んだ、と言う。次から次に・・・。何も言葉がない。

カブールもevacuation になるかもしれないなあと思いながら、やっとPCに向かおうとしていたら、セキュリティ担当官が血相を変えて部屋に入ってくるなり、Aに移動の許可を出したのかと怒鳴っている。はあ?Aというのは、部下の一人なのだが、許可も何もずっとミーティングでそれ以外は誰とも話す時間がなかった。すべての移動は許可がなければ禁止なのに、Aは勝手にゲストハウスに帰って荷造りを始めたということだった。セキュリティ担当官は彼の権限を越えて、僕が勝手に許可を出したと思ったらしい。彼は、Aをアフガニスタンからほりだしてやるとプリプリしながら出て行った。

どうでもいいけど、早くメールをチェックしようと思って、PCにたどり着いたら、部下のBが、ランチに帰りそこねたから、お腹がすいたと言って、僕の部屋に入ってきた。いきなり僕の机の上にあったプリッツェルを食べ始めた。バリバリと音を立てながら、なんで我々は今ここにいるのだ?と言っている。確かに、他のUNはもう帰宅しろという指令が出て戻ったところもある。

Bがプリッツェルを全部食べきったので、トルティア・チップをあげたら部屋から出て行った。と思ったら、午前中にミーティングをしたNGOの財務担当者が訂正した予算書とディレクターの訂正申請のレターを持って現れた。合意したとおりであるのを確かめて、帰ってもらった。僕がもたもたしている間に、このNGOは着々と仕事していたんだなと思う。

NGOの人と入れ替わりに、新入りの部下のCがひょろっと入ってきた。あるドナーがIPに導入しようとしている財務処理のソフトウェアについて何か意見があるらしい。部下のうち三人は公認会計士なので、そういうことには細かい。しばらく話して、これまでの経緯も同じ専門の人から聞いた方がいいだろうと思って、Cを連れてBの部屋に行った。そしたら、別の部下のDも入ってきた。公認会計士三人でいろいろ話していたが、僕がそのドナーと彼らのミーティングを設定することで話は終わった。

やっと、と思ったら、ドイツ人の一団がやってきた。そんなアポをした覚えがない。ある省に顧問として派遣されているドイツ人と、そこのプロジェクトに資金を提供するドイツ政府に雇われた人たちだった。ダムを建設する前の地雷除去をしたいらしいが、国連とかアフガン政府とかNGOとかの関わり方やら、資金の流れ方の複雑さに困惑していた。確かにややこしくて全部分かっている人なんているんだろうかと思う。僕も全貌はさっぱり理解できないが、分かっていることだけ説明した。契約書の見本を欲しいというので、後で送ることにした。とかなんとか話していたら、It's 4 o'clock, we gonna shut down ! と叫びながら、ゲーリーが入ってきた。

えっ?うそっ?もう4時?もう終わり?5時のミーティングが、と言いかけると、分かってる、一応連絡しただけ、と言ってゲーリーは家に帰っていった。ドイツ人が帰った後、またAがちょろちょろすると面倒なので、早く家に帰るようにと言いに行った。

結局、ゲストハウスに帰ったのは、7時5分前だった。7時に無線による安全確認が終わったあと、テレビで、"American Idol" と "Growing Up Gotti" と "Simple Life 2" を見た。三つともカテゴリーとしては、「リアリティもの」に入るのだと思う。アメリカの今が少し見えて興味深い。

カブールのこの季節の最大の楽しみである、野生キノコを昨日手に入れたので、キノコとチキンのオイスターソース味の炒め物とズッキーニのにんにくソテーを作って食べた。ごはんを炊き過ぎたので、ワカメ明太子おにぎりにして明日オフィスにもって行くことにした。

ベッドの中で今日ほとんど読めなかったメールを読んで必要なレスポンスを書いていたら、あっという間に午前3時になってしまった。とりあえず寝ることにした。


GWOT=Global War On Terror

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BBCはジャララバードの様子をこんなふうに(↓)報道している。

Riots over US Koran 'desecration'


BBC News / Wednesday, 11 May, 2005
At least four people have been killed and many injured after police opened fire to break up an anti-US protest in eastern Afghanistan, officials say.

Hundreds of students rioted in the city of Jalalabad over reports that the Koran was desecrated at the US prison camp in Guantanamo Bay, Cuba.

President Hamid Karzai has said the violence showed the inability of Afghan authorities to handle such protests.

The US authorities have said they are investigating the allegations.

"Obviously the destruction of any kind of holy book... is something that is reprehensible and not in keeping with US policies and practices," state department spokesman Tom Casey said.

President Karzai, who is in Brussels, told Nato that his country would need international assistance "for many, many years to come".

Buildings burned down

Afghan National Army soldiers, supported by US units, are out on the streets of Jalalabad to try and control the situation.

Protests also spread to the south-eastern city of Khost, where hundreds of students took to the streets.

In Jalalabad, buildings belonging to the United Nations are reported to have been attacked and the offices of two international aid groups are said to have been destroyed.

Pakistani ambassador to Afghanistan, Rustam Shah Mohmand, told the BBC the Pakistani consul's house had also been burned down and two cars torched.

One international aid worker in Jalalabad told the BBC that he could see smoke rising from points across the city.

He said there were groups of people running along the streets, reportedly looking for foreigners and anyone working for non-governmental organisations.

The BBC's Andrew North in Kabul says the violence comes after several months of mounting concern among foreign aid workers in Afghanistan over their security.

All UN and other foreign aid workers in the city have been told to move to safe areas.

The protesters chanted "Death to America" and smashed car windows and damaged shops.

"Police opened fire in the air to control the mob, and some people were injured," Jalalabad police chief, Abdul Rehman, told the AFP news agency.

Jalalabad is 130km (80 miles) east of the Afghan capital, Kabul, close to the Pakistani border.

Reports of abuse

The unrest follows a report in the American magazine, Newsweek, that interrogators at Guantanamo Bay had placed copies of the Koran on toilets in order to put pressure on Muslim prisoners.

Former Guantanamo inmates told the BBC Urdu service earlier this month that some Arab prisoners had still not spoken to their interrogators after three years to protest at the desecration of the Koran by guards at the camp.

On Sunday, the Pakistani government said it was "deeply dismayed" over the reports about the Koran.

Islamist parties there have called for a nationwide strike on Friday.

Both Pakistan and Afghanistan are close allies of the US in its war against terror.

Insulting the Koran or Islam's Prophet Mohammed is regarded as blasphemy and punishable by death in both Pakistan and Afghanistan.

The US is holding about 520 inmates at Guantanamo Bay, many of them al-Qaeda and Taleban suspects captured in Pakistan and Afghanistan following the 11 September 2001 attacks in the US and subsequent US-led invasion of Afghanistan

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