Tuesday, May 17, 2005

White City

昨日の夜9時過ぎ、リビングルームでテレビを見ていたら、オフィスのセキュリティ担当官から電話がかかってきた。「無線を聞いてないのか?」というから、あはっ、えへっ、聞いてない、リビング・ルームでテレビ見ていたしぃ、ともぞもぞこたえると、今日はもう外には出るな、インストラクションが入ってくるから無線を聞くように、ということだった。

あわてて、ベッドルームにVHF無線のハンドセットを取りに行くと、ちょうど僕のコールサインを呼んでいるところだった。無線室が全員の所在の確認を始めていたのだった。無線による安全確認は7時にすでに一回やってるから、カブールで何か起こったのだろう。

とりあえず、ハウスメートのラースに連絡しにいくと、彼のところにはまだ連絡が来ていない。セキュリティのインストラクションは、UNDP内にオフィスをおいているセキュリテの責任者から出て、それが各国連機関のオフィスに、夜間なら無線室に伝えられる。そこから、各オフィスのスタッフに伝えられる。ラースはすぐに自分のオフィスのセキュリティ担当官に確認の電話をし始めた。当たり前だが、彼のオフィスも同じインストラクションを受け取っていたが、回ってくるのが僕のところより遅かっただけだった。

それから、彼はあっちこっちに電話して、自分の国のデンマークの大使館にも電話して、情報を集めていた。彼の集めた情報を総合すると、シャリ・ナウでイタリア人の女性が誘拐された、ジャララバード・ロードと呼ばれているところの国連施設にロケット弾が15発ほど撃ち込まれたということだった。

う~む、なんか不穏な動きだな、と思っていたら、また無線による指示が入ってきた。カブールにホワイト・シティが適用された、よって明日はessential staff のみ事務所に行くことが許可される。必ず二台の車で移動。ということだった。そのあと延々と国際スタッフ全員がそれを聞いたことを確認するメッセージを返す声が無線から流れてる。

3日間ほどessential staff だけという日が続いて、やっと解除されたと思ったら、また一日で逆戻りだ。同時並行して進んでいる仕事がたくさんあるので、こういう事態はすごい障害になる。ほんとは身の安全とかそういうことをいろいろ考えるべきなのだろうが、真っ先に頭に浮かぶのは、あれが止まるとか、これが遅れる、とかそういう仕事のことばかりだ。

とりあえず、リビングルームに備え付けのPCから明日予定されてるミーティングやら仕事についての指示とか言い訳とか申し開きとか弁解とか謝罪とかごまかしとかのメールを送ることにした。

それから、数日前にこのゲストハウスに来た日本人の女性のことを思い出した。カンダハルに赴任するらしく、ちょうどセキュリティが悪化している時に初めてアフガニスタンに来てしまい、カブールで足止めをくらっていたのだった。

どういうわけか、この前会った時はまだVHF無線機を支給されてなくて(これってホントは大問題なのだけど)、何にも知らないかもしれないと思ったので、一応を寝込みを襲いに、いや連絡をしようと思って、彼女の部屋をノックしたが、応答なし。ラースも連絡しなきゃとか言って、うろうろしているが、男二人なので、どうしたらいいものか、いまやセクハラと言えば、国連名物みたいで、いろいろ指示されていて、男の職員は萎縮しがちなのだ。

しばらくラースとリビング・ルームで話をしていると、シャワーを浴びた彼女がひらひらと登場した。ラースは極めて事務的に事態の連絡をした。僕はもう一度VHF無線はもう支給されたか訊いたが、まだなのおぉ~、だった。

一夜明けて、今日も静かなオフィスだ。
所長とセキュリティ担当官は元軍人だから、こういう時、妙に高揚して張り切る。僕は自分の部屋で一人で仕事する。昨日の朝、同僚のチャールスが3日間ゆっくり休めたか、なんて訊くのでびっくりしたが、彼らは静かなオフィスどころか、ずっとオフィスに来ていなかったのだということをあらためて認識した。そして、また今日は自宅待機だ。これでは、やはりオペレーションに支障が出てしまう。僕は結局、毎日オフィスに来てるけど、いろんなことが中途半端に遅れてしまってる。なんか気持ちよくない。

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オフィスにいても、ぼやっとする時間が多くなってきた。これなら家で寝ていた方がましだと思う。昨日のイタリア人女性のことは日本の新聞に出ているだろうかと思って、インターネットを見ていたら、なんか日本では長者番付が出る季節らしく、誰それがランキング入りとかなんとか何本も記事が出ている。

テレビにたくさん出ている人は儲かってるってことなのだなと思う。ある芸能人は、一日あたり1000万円になるとか書いてあった。あんなくだらないこと言って、そんなにもらえるなら、若い人が学校なんか行ってもしょうがないと思っても、しょうがないと思うが、そういうこと言うと単に妬んでいるだけだと思われるんだろうな。なんにせよ、僕にはまったく関係のない世界だ。

イラクで誘拐された日本人の人の話もどうなったのかなと思うが、あんまり新しい情報はないようだ。ウェブの上でそうやってうろうろするうちに、「豪歌姫ミノーグさん、乳がんに」という文字が目に飛び込んできた。最初「豪歌姫」ってとこにひっかかって何か分からなかったが、カイリー・ミノーグのことではないか。なんと、とうとうそういうことになってしまったか。容姿が重要な仕事の人にとって、これはかなり打撃を受けるだろうな。気落ちしないで、ずっとキャピキャピ歌っていて欲しいと思うが。

ジェフ・ベックが7月に来日するという嬉しいニュースも見つけた。なんとかいけないものだろうか。なんとか対策を立てよう。

その後、Ansar Al-Sunnah のことをもっと知りたいと思って、ウェブを見ていると、あるわ、あるわ、ものすごい量の情報が流れている。どこまで行ってもきりがない。そうこうしているうちに、バグダッドにいるアメリカ人・ジャーナリストのブログに迷い込んでいた。

そこで見た一枚の写真。すぐに僕は" Generation Kill "に出てきた米兵たちを思い出した。ブログのその先が読めなくなった。


From http://michaelyon.blogspot.com/

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