Wednesday, January 04, 2006

ウーウー

今日はオーストラリア人一家のプルーデンス婦人の家に呼ばれて行った。プルーデンス婦人は日本の大学に来て日本語を勉強したらしく、並の日本人よりもまと もな日本語を喋る。だんなさんのジョンは在日オーストラリア大使館勤務で日本に来たが、その後外務省をやめて日本でビジネスを始めたそうだ。15歳のマ シューと13歳のダニエルという二人の息子はうちの上の子と同じ学校に行っている。二人とも金髪で背が高くハンサムだ。

我が家の他にカッチン一家も招かれていた。カッチンは日本人だが、だんなさんのマックスはアメリカ人で、彼らにも二人息子がいる。13歳のカイと6歳の ジュリアンで、ジュリアンがうちの上の子と同じクラスだ。カッチン家には一度家族で行ったことがあるが家の中にエレベーターがあるので驚いた。

プルーデンスの家にはとても素敵なホンモノの暖炉にホンモノの火がついていて驚いた。二階には長~い廊下があり、ベッドルームが四つ並んでいた。キッチン だけで四人家族が住めそうな広さで、そのキッチンが子ども用ダイニングと大人用ダイニングを分けるように配置されていた。日本にもこんな家があるのだな あ。

プルーデンス家に着くと、子どもはすぐに2階の子どもだけの世界に収容され、大人はとても趣味の良い、かつ数々のゲージツ品が展示されている居間に通され た。僕以外の5人は当然ワインを飲み(部屋が暖かかったので、僕は冷やっこいビールを頼んだ)、談笑ということになる。妻がカバブを作って持ってきたの で、それをつまみにした。作るたびに味は変わるのだが、今日のカバブはかなりおいしかった。

2時間半ほどして七面鳥が焼きあがったのでディナーということになった。三家族にそれぞれ二人ずつ息子がいるので、6人の男の子がいっしょに子ども用ダイニング、そして大人6人が別のダイニングで夕食を食べるようにセットされた。

6歳から15歳までの男の子5人はワーワー言いながら食べ始めたのだが、うちの下の子がウーウーと言ってごね始めた。やはり、お母さんといっしょが良いの かと思って、大人用ダイニングに連れて行こうとしても嫌がる。子ども用ダイニングに連れ戻してもやはりウーウーと嫌がってイスに座ろうとしない。きりがな いので、妻に先に始めるように言って、僕は下の子のウーウーにしばらく付き合うことにした。

そのうちに、他の5人の子どもは食べ終わって2階へ遊びに行き始めた。もう食べさせるのはあきらめて、下の子を2階に連れて行こうとしても嫌がる。まった く何がしたいのかさっぱり分からない。カッチンが様子を見に来て、こっちに来ていっしょに食べようと誘うがやはり下の子はごねて動かない。かなりイライラ する。

妻が食べ終わったので僕と交替に来たが、下の子の機嫌はなおらない。その日は11時前までプルーデンス家にいたのだが、結局下の子は最後までグズグスいったままだった。

何を望んでいたのか、何が気に入らなかったのかは、ホントのところは分からずじまいなのだが、後で考えると一つだけ思いつくのは、子どもと大人が別れると いう事態が理解できなかった、ということだ。2歳7ヶ月の下の子にとって、おかあさんと離れて食事をするということ自体かなり冒険である。そういうことに まったく慣れていない。それに加えて、代わりの大人が誰もいないという事態に混乱したのではないだろうか。

考えてみれば、プルーデンス家では最初から最後まで子どもと大人の区分がはっきりしていた。大人も子どもも入り乱れてごちゃごちゃに食事をするというのは 実にアジア的なのだ。カッチンだけが下の子を大人用ダイニングに連れてきてなんとか事態を打開しようとしたのは興味深い。

親は子どもの人質になってはいけない、親にも親の人生がある、子どものために親が自分の人生を失うのはフェアーじゃないというようなことが西洋の子育て本にはよく書いてあるが、プルーデンス婦人もそのようなことを言って、妻をいたわっていた。

これで思い出したが、初めての子どもが生まれる時、日本とアメリカの、出産から育児に関する定評のある本を読み比べて、言語と書き方の違い以外に内容にほ とんど変わりないのだが、一点だけ顕著な違いを発見した。それは、親はすべての理由がなくなっても赤ん坊が泣き止まないような夜に必ず遭遇する。その時、 アメリカの本はほったらかしにしておいて親も赤ん坊も慣れることを勧める。そこに自我の確立の第一歩を見ているようだ。日本の本は、そういう時、親が優し く抱いてやることを勧める。

結局のところ、親に分かる赤ん坊が泣く理由なんて限られていると思う。ほとんど分かっていないかもしれない。日本風とアメリカ風のどちらが良いのか分からないが、結果的には泣いている赤ん坊をアメリカ風に突き放すことは無理だと思ったのは覚えている。

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